ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第5回

4分10秒の大激戦で露呈したウルトラマンの致命的“弱点”

古谷敏×やくみつる

ホシノ ええっと、いい加減、第7位の発表をしないと。

やく そうですよ。

ホシノ そうですよって、やくさんがウルトラアタック光線の確認を始めたから。

やく (無視して)第7位は熱海での水中決戦となった、ギャンゴ!

古谷 おお、ギャンゴちゃん。

ホシノ では、戦いを振り返ってみたいと思います。

大善戦だった脳波怪獣・ギャンゴ。人間の脳波を感知して変形する隕石が悪人の思念で怪獣化。有機体の生命ではないため、体が傷ついても戦闘能力は低下せず。それがウルトラマンを苦しめた要因か

不滅の10大決戦 第7位

脳波怪獣 ギャンゴ  身長2.2m~50m・体重60kg~6万t

【バトル・プレイバック】

 ハヤタ、水中で変身し、海の中からウルトラマンが飛び出す。水の中を覗き込んでいたギャンゴは驚いて後ろにひっくり返るも体勢を整え、戦闘準備。ウルトラマン、右手人差し指で「来い、来い」と挑発したあと、パンチやキックで威嚇するギャンゴに対し猛然と突進。飛び上がっての脳天チョップ。痛がるギャンゴ。しかし、それはフェイクで、歩み寄るウルトラマンの足をつかみ、ひっくり返すという姑息な手段を取り、優位なマウントポジションからの体重押し潰し攻撃。だが、ウルトラマン、ここでギャンゴのお腹をくすぐるというファニーな攻撃を見せ、脱出してみせる。

 事態を好転させようとウルトラマンは走りながら飛び蹴りを放つも、ギャンゴは機敏に攻撃を回避し、無残にもウルトラマン、そのまま海へ。その様子を小バカにするギャンゴ。怒ったウルトラマン、海中からギャンゴ目がけて両手で水をかけるという今どき湘南の海のカップルでさえしない攻撃を仕掛ける。後ずさりするギャンゴに、ついにスぺシウム光線を放つかと思いきや、ギャンゴのやめてやめてのかわいそうぶりっこに同情したウルトラマンがポーズを解き、脳天チョップ攻撃へと繋ぐ。その攻撃で頭のアンテナをへし折られたギャンゴは方向感覚を失い、酔っ払いのようにクルクル。気がつけばカラータイマーが赤へ。そこでウルトラマン、ギャンゴの背後に回り、前蹴りを食らわせ、海へと叩き落す。

 海から這い出したギャンゴは腕を十字にしてのスパーク攻撃を試みようとするが、海に浸っていたためか、あえなくショートを起こし、自分が傷つくことに(スぺシウム光線のポーズのマネをしたのではないかという説も)。それでも怯まず、闘牛のような突進を見せるギャンゴ。その突進をボクサーのフットワークのような華麗な足さばきでかわしてみせるウルトラマン。

 この終わりが見えぬ戦いに終止符が打たれたのは、病室の鬼田(悪知恵が働く愉快犯)が目覚め、警察の「早く怪物のことを忘れるんだ」の一言で我に返ったときだった。思念が消えたことによってギャンゴは消滅。ウルトラマンはギャンゴに決定的な一撃を食らわすことが叶わず、結果的には無念のドロー決着となった。

 

ホシノ まずはやくさん。なぜにギャンゴ戦を栄光の7位に。

やく まあ、言っちゃなんですが、強豪怪獣ではないんですよ、ギャンゴは。

ホシノ 戦いぶりも、ちょっとね。

古谷 (笑)。

ホシノ 古谷さんがギャンゴちゃんと“ちゃん”付けしちゃうくらいですから。

古谷 ワッハハハ。

やく おふざけみたいな怪獣なんですけども、それなのに決戦シーンは4分10秒もかかっている。

ホシノ えっ、3分どころか驚異の4分超え!

やく たまたま鬼田の意識が回復してくれたからよかったものの、あのまま格闘が続いていたら、果たしてウルトラマンはどうなっていたか。あんな“おちゃらけた怪獣”がですよ、あそこまでウルトラマンを苦しめた。そういう意味では大善戦なんです。ソコをまずは評価したいと思っております。

古谷 そうか、4分以上も戦っていましたか。そりゃ大善戦だ(笑)。

やく その意外な強豪ぶりを称えたいんです、私といたしましては。

アントラーの大顎に続き、ギャンゴの頭のアンテナもへし折ったウルトラマン。本当にウルトラマンは怪獣の突起物が大嫌いだったようだ

ホシノ どうにもウルトラマン、ギャンゴ戦に限っていえば、相手のペースに合わせちゃっていますね。

やく ウルトラマンもおちゃらけてるといいますか、滅多に「来い、来い」みたいな挑発ポーズはみせないですからね。

古谷 確かに。まあ、うん、かなりコミック的な決戦でしたかね。

やく それだから、ボクシングのようなフットワークを取り入れたのでしょうね。

古谷 ん?

やく さきほどウルトラアタック光線の話の中で、“どっしり感”がポイントだったことが判明しましたよね。そう考えるとギャンゴ戦はコミカル要素の多い戦いになった。そのため無意識のうちに古谷さんが画面を軽くするためにボクシングの軽い動作を取り入れたのではないですか。

古谷 ああ、そうかも知れません。

ホシノ 古谷さんはボクシング的なファイトは好きではなかったんですよね。

古谷 ええ、あまり好きじゃなかったです。

ホシノ くすぐり攻撃も……。

古谷 あまりしたくはなかった。

やく そうなると、やはりあえてギャンゴ戦=コミカル=軽い――ことを茶の間に伝えるために、ボクシングの動作を入れたと思いますね。

古谷 ですね。絵的にもウルトラマンの動きを軽く見せないと、ギャンゴの良さも活きてきませんし。

ホシノ 今の言葉、第7戦のテーマを的確に突きましたね。

やく これはあくまでも偶然なんですが、第8位のケロニア戦と第7位のギャンゴ戦は“対のもの”と考えてもよろしいんじゃないでしょうか。絵的に重さと軽さが対になっている。

古谷 ええ、まさに対だと思います。

ホシノ それと、このギャンゴ戦で語っておかなければいけないのは、今や伝説となっている「古谷敏溺れかけ事件」なのですが。

古谷 ひどい目に遭いました(笑)。

やく 撮影前にプールに入る、水の中に潜るという打ち合わせは?

古谷 ありました、大雑把に(笑)。

やく でも、誰も古谷さんが溺れるとは?

古谷 誰も思っていなかったですね。当然、僕も思っていませんでした。

やく 当時、マスク&スーツに水が抜けるような配慮はされていなかったと?

古谷 されていなかったですね。水が入ってきたら、入ってきたまんま。どこからも水を抜くことはできませんでした。ウルトラマンが飛び蹴りをスカされ水の中に落ちるでしょ。その瞬間から、地獄が始まりましたよね。目のところに視界を確保する小さな穴が開いているんですけど、そこからポコポコと水が入ってきて。

マスクの目の下、視界を確保する小さな穴から水がコポコポと入り込み、古谷氏は誰もが予想しなかった絶体絶命のピンチに陥る

ホシノ ああ、そりゃダメだ。

古谷 いまも言いましたように、どこからも水が抜けないので、どんどんマスクの中に水が溜まってくる。マズいぞ、このままだと溺れてしまうと必死に両手両足を動かし、プールの縁にたどり着いた感じです。

ホシノ 水中の撮影なのだから、もう少しスタッフも配慮してもよかったと思うのですが。

古谷 もちろんスタッフも緊張感を持って撮影に臨んでいましたよ。ただねえ、彼らからすると水より怖いのは火、爆薬のほうなんです。そのため、ウルトラマンがプールに落ちたぐらいでは緊急事態にはならないだろう、と思っていたんじゃないですか。でも、現実は水って怖いんです、本当に。

やく ウルトラマンのほうがジャミラよりも水に弱くちゃシャレにならない(笑)。

古谷 なんにせよ、テレビにおける特撮の黎明期の話ですし、そういう失敗を繰り返した結果、マスクやスーツが時代とともによりよく改良されたみたいですから、僕の苦労も少しは報われたかな、と思っています。だけど、う~ん、それは今だから言える言葉かもしれませんね。ギャンゴ戦の撮影後、僕は監督に「もう水中での戦いはしたくありません」って訴えているし(笑)。

ホシノ その危険な水中での決戦後、悪党の鬼田の覚醒によって、ギャンゴは消え去ってしまうのですけど、これはドロー決着と判定するべきなのでしょうか。

やく ソコもなんですよ、私が第7位に選んだのって。決着が曖昧な分、妄想が広がりやすい。いえ、妄想を存分に楽しむことができる。あの時点で、もし、鬼田が覚醒しなかったとしたら、果たしてウルトラマンはどんな戦術を取っていたか。

古谷 やくさんはどんな決着になったと考えています?

やく そうですねえ……。ギャンゴ戦でウルトラマンはスぺシウム光線を出していないんですよ。なので我慢できずにスぺシウム光線を放っているとは思うんですが……。

古谷 何か引っかかる点でも?

やく ギャンゴはほら、鬼田の思念が正体ではないですか。思念に対し、スぺシウム光線が通じるかどうか疑問なんです。

古谷 ほう、それは鋭い。

やく となると、もしかしたらですよ、ケロニア戦よりも早く、このギャンゴ戦でウルトラアタック光線を放っていたのではないか。それこそ思念に打ち勝つのは地球の大いなる力を借り――。

古谷 “丹田”にも力を込めて(笑)。

やく 渾身の一発を放ち、見事ギャンゴを粉砕したはず。

ホシノ おお、パチパチパチ。

やく そんな妄想を繰り広げられ、楽しむことができるんですから、やっぱりギャンゴ戦を第7位に選出したのは大正解でした。

(第6位は11月15日に発表予定)

司会・構成/ホシノ中年こと佐々木徹

撮影/五十嵐和博

©円谷プロ

誕生55周年記念 初代ウルトラマンのMovieNEX 11月25日発売!

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プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

 
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4分10秒の大激戦で露呈したウルトラマンの致命的“弱点”