ガザの声を聴け! 第33回

マジドとアマル――ガザの希望と絶望 前編

清田明宏
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2016年の夏に起業家ビジネスコンテストで優勝したマジドさんと2位だったアマルさんにも、今回のガザ訪問で久しぶりに会えた。ガザ市内の喫茶店で、なんとワッフルを食べながら、いろんな話をした。二人の会社にもお邪魔した。相変わらずとても元気だった。

マジドさんは経済封鎖により不足するコンクリートの問題を解決するため、コンクリートの含量が少なく、焼却灰を混ぜた軽くて強いコンクリートブロックを作成し、関係者の度肝を抜いた。他の参加者をなぎ倒して2016年のビジネスコンテストで優勝した。まだ24歳だが強者だ。最近3000個のブロックの注文が入ったと、元気に話してくれた。次はガザの電力不足に対応するため廉価で使いやすい太陽光パネルと電池を輸入販売するのだ、と張り切っていた。

アマルさんは、階段でも使える、左右に3輪のついた荷物運搬機を作って、2016年の「ガザ・アントレプレナー・チャレンジ」に応募した。日本で駅の階段で売店の荷物を運ぶのに使われている商品に似ている。ガザでは電気事情が悪いので、アパートにあるエレベーターが使えない。荷物運びが大変だ。そのためにこの運搬機を作成したそうだ。将来は人も運べる電動の、階段を上れる車を作るのが夢だ。その思いをきちんと語って、2位になった。

彼女たちとの会話はものすごく弾んだ。最初は彼女たちの仕事の話を聞いたが、その後、ガザの状況とそれに対する思いを二人に聞いてみた。二人は自分の思いをぶちまけ、お互い激しく議論した。同じ思いを共有する場面もあったが、考えが全く異なる場面も多く、今風の言葉で言えば、ガチでぶつかっていた。ただ、その根底には、ガザに対する強い愛情と将来に対する深い思いがあり、とても良い雰囲気だった。話が終わった後、二人は笑いながら、私たちは本当に仲が良いのだがこのような話をしたのは初めてだ、と言っていた。

特に印象に残ったのが、アマルさんだ。コンテストの時はマジドさんの意志を貫く元気に皆圧倒され、相対的にアマルさんの印象は薄かったが、今回、彼女の話を聞いて、その真摯な姿勢に非常に感銘した。私が言うのもおこがましいが、ものすごい成長だ。今回は、その時のアマルさんの話を中心に、ガザの若い人の思いを探っていきたい。

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ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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マジドとアマル――ガザの希望と絶望 前編

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。