著者インタビュー

揺れる日本、正確な予測で 被害を最小限に食い止めたい!

『地震予測は進化する!』著者インタビュー

村井俊治
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不気味な「沈降」、異常値後の「静穏」が怖い

──メルマガの地震予測速報も以前と比べるとずいぶん進化して、危ない地域が図版の色分けで一目でわかりますね。
 ええ、速報に関しては、どうしたら危険な地域や前兆の有無を「見える化」できるか、日々創意工夫を重ねています。
 我々のMEGA地震予測では、地盤の沈降は青色、隆起は暖色寄りの色(緑色、黄色、ダイダイ色)で表現していますが、一番怖いのは、地面が沈降すること。確実に沈降が危ない。じつは今、日本各地で青色がどんどん広がっているんです。2週間続けて沈降している。3週間ぐらいすると、どこかでどーんときます。でも、なぜ沈降が地震につながるのか、その理屈はわからない。これは経験値です。
 もう一つ。沈降があってそれが隆起に転じるときがある。どんどん沈降し、あるとき突然隆起が始まる。その変わり目、反転するところが怖い。沈降だけで地震が起きる場合もありますが、沈降したものが反転して隆起に転じる、その瞬間が怖い。その逆もあります。隆起していたのがどんと下がる。この境目に大きな地震が起きる可能性が高い。
 もう一つ怖い前兆があります。検証データに異常値が出ていたにもかかわらず、地震の直前に静かになるんです。嵐の前の静けさというのは、地震にぴったり当てはまるんです。私たちは「静穏」と言っていますが、異常値の後に静穏状態が続くと怖いんです。中でもなく大でもなく、小さな地震がちょこちょこ起きるのも「静穏」の一つです。今、そういう状態なんです。ですから、私たちは経験値で、「今、静穏状態が続いています。静穏の後に大きな地震が来る場合がありますので警戒を怠らないでください」とメルマガで注意を呼び掛けているわけです。
──その予測が「信頼できる」という実感があるからこそ会員数も伸びているわけですね。
 我々は予知をしているわけではないので、「的中率」ではなく「捕捉率」という言い方をしています。地震の前兆の異常を捕捉した確率という意味ですね。その捕捉率では、3カ月から6カ月以内まで全部入れると、85%の確率で異常の速報の後、地震が起きています。つまり、速報を始めた2013年から2018年まで震度5以上の地震が50個ほどありましたが、その地震の前兆を85%の確率で捉えていたということになる。
 ただ、正直言って、まだ、今の予測方法は正確度に欠けています。これは認めざるを得ません。困ったことに、大きい地震ほど異常が出て地震が起きるまで時間がかかるんです。前兆が出て大体3カ月、最大6カ月かかることもある。そうすると会員の方の中には「3カ月は待てるけど、それ以上は忘れちゃうよ」と文句を言う方も出てこられる。
──でも、はっきり前兆が出ているのに、そこで「警戒」を解くわけにはいきませんよね。
 ええ、そうなんです。以前、それで失敗したことがあるので、そこは注意深く警戒、注意を怠らないよう気を付けています。
 ただし、朗報もあります。いつ地震が起きるか、その前兆を2週間以内に捉える新しい方法を開発中で、それが今、特許を出願する直前になっています。今回の本にもちょっと、そのさわりを書いてありますが、それが実現すると、世界的にもかなり画期的になると思います。
──それは本当に朗報ですね。「2週間以内に地震が来る」とわかれば、備えが万全にできます。すごいことです。
 ええ、でも私はそれでも完璧ではないと思っています。地震は、非常に複雑な現象なんです。地域性もあるし、時間依存性もある。何百年前の地球の状態とまた同じような状態で地震が起きることは考えられません。今の地球は全く違う動きをしているんですから。東日本大震災の前と後では全然違います。熊本地震の前と後でも違います。さらに地球の構造にも依存している。震源が浅いか深いかは事前にわかりませんが、震源が浅い地震と深い地震とでは全然違うんです。
 ご存じのように、ゆらゆら揺れたり、がたがた揺れたり、どすんと来たり、揺れ方だってさまざまですよね。その非常に複雑なものを一つの方程式であらわそうということ自体が大きな間違いなんです。ですから地震予測の研究には、常に柔軟で、常識に縛られない態度が必要ですね。

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プロフィール

村井俊治

むらい・しゅんじ 1939年生まれ。東京大学名誉教授(測量工学)。地震科学探査機構(JESEA)取締役会長。2000年の定年退官まで、東京大学生産技術研究所教授を務める。著書に『東日本大震災の教訓 津波から助かった人の話』『地震は必ず予測できる!』等。

 
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