対談

コロナ禍で激変した世界秩序はどこへ向かうのか

東アジアから未来を遠望する【後編】
内田樹×姜尚中

まっとうな大人を政治家に選ぼう

内田 日本の場合は、天皇制によって一定の制度的安定性を担保されている代償に、市民的成熟を免ぜられているということがあるような気がします。パターナルな「芯」があるおかげで、国民ひとりひとりに、自分自身を「まっとうな市民」に形成してゆかねばならないという気概が乏しい。その悪い面が今回のコロナ禍で、はっきり出てきたという気がします。

 そうですよね。本来ならお互いが助け合わないといけないのに、「他県は来てくれるな」という風潮を見ていると心配になってしまいます。

政治学者・姜尚中氏(撮影:三好妙心)

協力して感染源を抑えることができれば、結局他の自治体にとってもプラスになるのに、どうして自治体のリーダーたちがお互いを罵り合ったり、批判したりするような発想になってしまうのか、方向性がちょっと違うんじゃないのかと言いたいですね。

内田 本当にそう思いますよ。関西では大阪府と兵庫県がやり合ったりしていますし、名古屋市長と愛知県知事の関係も険悪で、市長が知事のリコール運動なんかしてますからね。知事がPCR検査の支援を申し出ても、河村たかし市長は返事もしないでしょう? 

こういうことひとつとっても、政治家の市民的成熟度の低さと幼児性が、このコロナ禍ではしなくも露呈したという感じがつくづくしますね。これを奇貨として、やっぱりもうちょっとちゃんとした人を政治家に選ばないと、社会がもたないということにみんなが気づいてくれるといいんですけど。

選挙は人気投票じゃないんですから、テレビで見たことがあるから、名前を知ってるから、というような理由だけで票を入れるのは止めてほしい。本当にちゃんとした仕事ができる、大人の政治家を統治の要路に配していただきたいと思いますね。

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プロフィール

内田樹×姜尚中

 

内田樹(うちだ たつる)

1950年東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。著書に『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)『日本辺境論』(新潮新書)『街場の天皇論』(東洋経済新報社)など。共著に『世界「最終」戦争論  近代の終焉を超えて』『アジア辺境論  これが日本の生きる道』(いずれも集英社新書・姜尚中氏との共著)等多数。

 

姜尚中(カン サンジュン)

1950年熊本県生まれ。政治学者。東京大学名誉教授。熊本県立劇場館長・鎮西学院学院長。専門は政治学政治思想史。著書は累計100万部を突破したベストセラー『悩む力』をはじめ、『続・悩む力』『心の力』『悪の力』『母の教え  10年後の「悩む力」』(いずれも集英社新書)など多数。小説作品に『母ーオモニ』『心』がある。

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