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田村淳の“青学生失格”戦記 後編
田村淳

──では、この100日間を簡潔に振り返って「激闘青学受験・喜怒哀楽」をお聞きしたいのですが。まず、一番楽しかったことは何ですか。

 毎日、自分が知らなかったことを勉強するのが楽しかったですね。例えば、日本史を勉強しているときに、ああ、鎌倉時代は源頼朝から三代しか続かなかったんだとか、途中で北条が権力を奪い取ったんだなって知ると、やっぱり学びながらワクワクしますよね。今まで僕は、戦国時代と明治維新という時代が動いた歴史が好きでしたけど、日本史を学び直すと、時代って常に動いてんじゃんと思わされました。

 興味深かったのは、青学のこの10年の日本史の出題傾向を研究したら、やたらと観応の擾乱が出てくるんですよ。青学って観応の擾乱が好きだなってわかって。10年分の青学の日本史の問題を解いていくと必ず出てくるんです(笑)。

──では一番悲しかったこと。辛かったことでも。

 辛かったのはフィリピンに超短期留学したことかな。さっき話をした最初の英語の先生に、「ハナっから英語が嫌いな人間が英語を学ぶにはどんな方法が一番いいですか?」って訊いたんですよ。で、その先生が言うには、「それはもう留学が一番です。留学した人はみんな英語が好きになって帰ってきますから」と言われて。
 
──それでフィリピンへ超短期留学?

 最初、無理だろって思ったんです。でも、英語の壁を乗り越えるには、それもアリだなと思ったから、すぐにマネージャーにスケジュールを確認してもらって、それでなんとか3日間だけ無理をすれば時間を作れることがわかってフィリピンに飛んだんです。
 
──そりゃまた、しんどい。

 実際にその3日間、寝ずに英語にまみれましたから、本当に苦しかった。というのも、この期間、日本語を使っちゃいけなかったんです、たとえ日本人同士でも。
 1時間英語の授業があって15分の休憩を挟んで、また授業。それはいいんですけど、前の授業のときに疑問に思ったこと、こういう場合、英語ではどう表現するのかなとか、こういう場合の文法はどう解釈すればいいのか、という疑問や質問が出てきても、すべての会話を英語でしなければいけなかったので、先生に訊けないんですよ。それじゃ英語を深く勉強できないじゃないですか。

 例えば、授業の中でbe動詞のことを説明しているのはなんとなくわかるんだけど、そのbe動詞がこの長文の中でどんな役割や意味を持つのかを質問したくても、英語に変換できないから先生に聞けないんですよ。向こうは当然be動詞ぐらいは知ってんだろって感じで授業を進めるんですけど、マジ、こっちはそのbe動詞がわからないんだけどなあ、みたいな。

 で、授業の最終日に、僕泣いたんですよね。フィリンピンの語学学校の校長が僕を呼んだんです、学校の体育館に。たった3日間の語学留学なのに、そこで僕の卒業式をしてくれて。そのときに涙を流したんですけど、その瞬間は「人間っていいな」って涙だと自分の中では解釈してましたが、今考えるとたぶん、しんどくて泣いてたんじゃないかな(笑)。
 
──結局、英語のレベルは……。

いや、多少はね、ヒアリングとか単語の読解力みたいなのは上がりました。それが唯一の救いでした。けど、英語を好きになれたかというと、そんなには(笑)。

──英語は結局何が一番ダメだったんですか。

単語の量だと思います。単語の量がもう少し増えたら長文が読み解けそうって段階だったんで。最初から単語重視で取り込んでいれば何とかなったかも。それも青学の英語の試験に特化した単語だけを重点的に学んでいれば…という後悔は確かにあります。これは現役の学生たちへのアドバイスになりますけど、行きたい大学を絞ったなら、その大学の出題傾向を研究して実際に何度も解いてみて、英語だったらよく出る単語を時間かけて勉強したほうがいいです。

©AbemaTV

 

──結果的にはすべて落ちたんですが、リアルに現在の心境は。

 まあ、すべての結果が出る前に、落ちたときのことを考えて、傷つくってどんな感じなんだろうなって思ってはいたんですけど、僕は意外とすぐに気持ちを切り替えることができて。そしたら次にどうすれば法律のことを学べるのか、という方向に考えが向きましたね。合格発表前から受かったらこうしよう、落ちたらこうしようとシミュレーションできていたんで、割とスムーズに気持ちを切り替えることができました。
 現役の受験生からは「淳の野郎、軽く気持ちを切り替えることができたとか言いやがって、こっちは切羽詰まってんだぞ」って怒りを買うんでしょうけど、それは違いますよね。だって、僕はずっと前から社会に出て、自分のやりたいことをここまでやってきた上での受験だから、俺たちと同じくらいに落ち込めよ、と言われてもウソになっちゃう。というか、現役の連中よりも確実に残りの人生、僕のほうが短いわけで、落ち込んではいられないよってことです。だからまあ、意外とケロッとしています(笑)。
 
──受験の戦術を間違えましたかね。

 やっぱり初めての大学受験だったし、いろんなことが手探りの状態でした。すべては自分の至らなさ、受験の傾向を知らなかった僕の無知のせいだと思います。青学の英語の出題傾向がわかっていて、それに沿って単語を覚えていけば、もっと違う戦い方ができたかもしれない。
 とりあえず浪人はするんで。

──またトライするんですか。

 再び大学を受験するかはわからないです。でも、法律は学びたいので、そのためにどうするか。大学の法学部に進学したほうがいいのか、大学に行かなくても、よりよく学べる場があるのか。それを探すという意味で浪人するということです。ただ、またトライするのが1年後になるか2年後になるか見えていないですが。
 
──淳さんの受験を通して思ったのは、学びたいことがあって取り組むのが「大人の受験」だということです。

 うん。だから、僕は落ち込んでいないんです。今度は青学じゃないかもしれないし、もっと自分に適した場で法律を学べるのであれば、そのベストな環境を追求していきたいですね。それが見えてくるまでは浪人しようと思ってます。

取材・文/佐々木徹  写真/よしもとクリエイティブ・エージェンシー

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『日本人失格』

プロフィール

田村淳
1973年山口県生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。タレント「ロンドンブーツ1号2号」として、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)『緊急SOS!池の水全部抜く大作戦』(テレビ東京)などバラエティ番組から、『田村淳の訊きたい放題!』(TOKYO MX)のような情報番組まで多彩なジャンルの M Cを務める。著書に『日本人失格』(集英社新書)等。

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