宮古島・陸自ヘリ墜落現場では何が起こっていたのか

取材・文・写真/大袈裟太郎
大袈裟太郎

自衛隊配備、その背景にあった事件

2019年に開所した陸上自衛隊宮古島駐屯地だが、この誘致に絡み、前市長の下地敏彦氏が2021年に逮捕された。下地前市長はゴルフ場「千代田カントリークラブ」が候補地として選定される過程で、自衛隊沖縄地方協力本部や沖縄防衛局に対し「千代田を中心に事業を進めてほしい」などと要望し、ゴルフ場側から650万円の現金を受け取ったという収賄の容疑だ。同ゴルフ場の経営者も贈賄の疑いで逮捕され、この事件は翌22年に有罪が確定している。

この下地俊彦氏は沖縄の自民党系首長で作る「チーム沖縄」の会長で、菅義偉首相(当時)とのパイプを誇っていた人物。「政府自民党とのパイプ」がもたらしたものは、結局贈収賄事件だったというわけだ。今の日本政府と防衛省の基地利権構造を象徴する事件だが、宮古島の自衛隊配備の背景にこのような事件があったことは、本土ではほとんど知られていない。

「不透明な自衛隊候補地選定」、さらに「ゴルフ場」というキーワードが並ぶと、石垣島の駐屯地配備の構造とも似通ってくる。ただ、大きく違うのは、下地氏が2021年の市長選で落選したことだ。この落選から4ヶ月後。下地前市長は逮捕された。

この贈収賄の情報は、ゴルフ場の用地測量業務などを代行していた建設コンサルタント業者のある男性によってリークされたものだった。その人物に取材を試みたが、すでに亡くなっていた。

ある島民は「下地は650万で島を売った」と話す。また別の島民女性は「市長の在任中は警察も遠慮して捜査しないのよ。狭い島だから、いろいろとあるのよ」と意味深に語ってくれた。5万5千人のこの島には、この島独自の力学があることを感じさせられた。

陸上自衛隊宮古島駐屯地。撮影していると自衛官が警告に来るが「撮影禁止の法的根拠が無いこと」をこちらが告げると自衛官はそそくさと帰っていく
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プロフィール

大袈裟太郎
大袈裟太郎●本名 猪股東吾 ジャーナリスト、ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。
やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 
2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り、2020年は米国からBLMプロテストと大統領選挙の取材を敢行した。「フェイクニュース」の時代にあらがう。

 

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