著者インタビュー

新人漫画家への心得の書【後編】

『読者ハ読ムナ(笑)』 企画者・武者正昭氏インタビュー
武者正昭

2016年7月に刊行された『読者ハ読ムナ(笑):いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか』は、人気漫画家・藤田和日郎氏の仕事場のルールを詳細に明かしているのみでなく、漫画編集者側の立場や「ありがちな」アドバイス、作品づくりのコツまでを網羅的に記した、「新人漫画家の虎の巻」である。

漫画編集者は日々、何を考えて暮らしているのか? 本書企画者にして藤田和日郎氏の初代担当である漫画編集者・武者正昭氏へのインタビュー、後編をお届けしたい。

 

——編集者がこれだけ具体的に思考やテクニックを言語化して披露することは、珍しいと思います。

武者 編集の色々なテクニックって、大体が属人的なんですよね。ある特定の人が持っていて、でもその人がいなくなってしまったら、まるでわからないとか。継承されていなかったり。

武者正昭氏 (撮影:内藤サトル)

だから、編集者はもっと語るべきだと思います。そうじゃないと、いくら良いことを言っていても、残らない。打ち合わせのその場限りで漫画家と編集がワーッとやって、「イイネ!」とか言って、それでおしまいになってしまう。この世界の特徴なんですが、打ち合わせって基本的に公開されないので、ブラックボックス化しているんですよ。そもそも何の話をすればいいのか、自分のやっていることが標準的なのかどうか、まるでわからない。僕自身も、長らくそれが疑問で。

やっぱりもう少しマニュアル化したり言語化したりして、お互いに切磋琢磨できるようにした方が良いんじゃないですかね。この本が珍しいと言われてしまうのも、ある意味でその象徴でしょう。

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プロフィール

武者正昭

1957年東京都生まれ。早稲田大学卒。1981年(株)小学館に入社。「少年サンデー」「ヤングサンデー」「ビッグコミック」「ビッグコミックスピリッツ」など、これまで編集として数多くのマンガ誌に携わり、「flowers」「Cheese!」では編集長を務めた。編集としてのキャリアは30年を超える。これまで輩出したミリオンセラー作家は、『健太やります!』の満田拓也、『行け!!南国アイスホッケー部』の久米田康治、安西信行、菊田洋之、きらたかし、なかいま強、『うしおととら』の藤田和日郎、『海猿』の小森陽一・佐藤秀峰、『娚の一生』『姉の結婚』の西炯子、『しろくまカフェ』のヒガアロハなど。2018年5月1日にNHN comicoが運営するマンガ・ノベルアプリ「comico」の編集長に就任。2019年4月1日よりNHN comico株式会社代表取締役社長。

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