ウルトラマン不滅の10大決戦 完全解説 第5回

4分10秒の大激戦で露呈したウルトラマンの致命的“弱点”

古谷敏×やくみつる
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やく ちょっといいですか。

ホシノ はい、どうぞ。

やく 「不滅の10大決戦第7位」の発表の前に、前回の8位ケロニア戦で言い忘れたことがあるんですが。

ホシノ えっ、あれだけ語り尽くしたのに!

やく そう(笑)。なにせケロニア戦でしか披露されなかった“ウルトラアタック光線”に関して十分に触れていなかったですし。古谷さんに確認したいこともありますし。

古谷 はい、どうぞ(笑)。

やく ウルトラアタック光線、あの突きのポーズは、ご自分で考えられたのですか。

拳を力強く握り、脇を締める、空手の基本ポーズ。見逃しそうなシーンではあるが、深く掘り下げていくと、その先に新たな事実が見えてくる

勢いよく突いた右腕から、白い螺旋状の光線が放たれる。これぞ、ウルトラアタック光線の極意!

古谷 そうです。僕があれこれ考え、そのポーズを観て監督(樋口祐三)がOKを出しましたね。

やく 第31話『来たのは誰だ』(ケロニア登場)の台本をもらったときに、ウルトラアタック光線について書かれていたりとかは? 例えばト書きに「ウルトラマン、新しい光線技を出す」みたいな

古谷 いえ、何も書かれていませんでした。

やく それはまた、いきなりですね。

古谷 いきなりもなにも、現場に行くと監督から「今回はスぺシウム光線が効かない。代わりに新しい光線技を繰り出すことになった。だから、光線を出すポーズを考えてよ」と言われて。

やく そのポーズに後から科学的な映像処理を加えて。

古谷 そうです。

やく それにしても、その場でよくぞあのポーズを考えつきましたよね。まあ、古谷さんの動きがウルトラマンなのだから、これでやる、とご本人が決めれば何の問題もなかったでしょうが(笑)。

古谷 それはその通りですけど、それでもそれなりに悩みましたよ、やっぱり。その日の撮影も差し迫ってきたし、早くポーズを決めなきゃと少し焦っていました。結局、何パターン作ったんだろう……。ああでもない、こうでもないと動いてね。まずは手を開いて、あれこれ動いているうちに、偶然に開いた手がクロスするような形になってしまい、これじゃスぺシウム光線になっちゃうとやり直したり(笑)。

ホシノ そうか、スぺシウム光線との差別化を図るために、突きのグーパンチの形にしたのですね。

古谷 そういう意識もあったのでしょうね。それでなんとか試行錯誤しているうち、あの突きのポーズに落ち着いたわけです。監督の樋口さんも「いいんじゃないか」とOKを出してくれましたし。

やく 監督にとって決め手は何だったのだろう。

古谷 単純に、あの突きのポーズを出したときのカッコよさだったんじゃないですか。それとウルトラマンとしての動きの中で、あのポーズがハマるかどうか。あとは映像的なバランスも考慮したのだと思います。

やく 最終的に突きの形に落ち着いたのは空手を習っていた下地が大きかったという部分も?

古谷 それもあると思います。自分が慣れ親しんだ動きを追い求めた結果といいますか、感覚的にボクシングのような動きじゃないだろうなとは思っていましたね。

ホシノ ボクシングのフットワークを活かしたジャブのようなパンチの形だと重みがないと判断したのかも知れませんね。

古谷 ああ、そうかも。どっしり感ですかね。なにせ必殺のスぺシウム光線が通じなかった事実は大きいと思うんですよ。いや、大きかったと考えたのでしょうね、当時の僕は。とにかく切り札が切り札にならなかった。となると、次に繰り出す技は相当な説得力を持たせなければならない。なのに、そのポーズが軽いイメージだと子供たちもがっかりするだろうし、そこはどっしり感を前面に押し出した、これぞ渾身の力を集約させた一発を繰り出せるポーズにしなければ、と考えたのでしょう。そういう想いがグルグルと僕の頭の中で駆け巡り、最終的には地に足を付けた空手の突きのポーズにたどり着いたのではないかと思います。

実際にお会いするとわかるが、古谷氏は体の各パーツが大きく、なおかつシャープ。握られた拳は大きくゴツいけども、どこか滑らかな上品さも感じられる

ホシノ 今の話をうかがっていて、空手の世界でよく使われている“丹田”という言葉を思い出しました。

古谷 空手では腹に力を込める、溜めることを“丹田”と言いますね。簡単に説明すれば、人間のヘソの下あたりのことを指すのかな。

ホシノ ケロニア戦でのウルトラアタック光線を繰り出す場面を見直してみると、古谷さん、いや、ウルトラマンがちゃんと“丹田”に力を込めているのがわかるんです。

古谷 なにせ“丹田”に力を入れるのは空手の突き、蹴りにおける基本中の基本ですから。自然と“丹田”に力が入っちゃったんじゃないですか(笑)。

やく 今の話で、なぜ古谷さん、いえ、ウルトラマンがウルトラアタック光線においてボクシングのパンチの形を取り入れず、空手にしたのかわかりました。ウルトラマンは切り札のスぺシウム光線が効かなかった。こうなると、最後は地球の力を借りようと大地に足を踏ん張り、そこから湧き上がってくる偉大な自然のエネルギーを“丹田”に溜め、一気に右手の突きから螺旋状に光線を放った。私はいま、そんな妄想を描いてしまいました(笑)。

ホシノ いや、あながち妄想とは言えないかもしれませんよ。空手といえば、あの『空手バカ一代』(作/梶原一騎。画/つのだじろう)の大山倍達先生。

やく ゴッドハンド!

ホシノ その大山先生が『極真の精神』という教えの中で、このような言葉を残しているんですね。

「武術では、いつでも最大の効果が身体の動きとつながっているように、意・力・動作がつねに絡み合い、結果として最大の効果ある動きができるように訓練しています。このために考えられたのが丹田です。つまり、腹なんです。自然の大いなる力や精神が丹田にあれば、自ずと武術の技も丹田から出て手先、足先にスムーズに及ぶ結果となります。そのため、いかなるときでも基本の突き、蹴り、受けは丹田に力を込めていなければいけません」

 自然の大いなる力をやくさんが指摘した地球の力に置き換えて考えれば、ウルトラアタック光線の真実が見えてくるような気がします。

古谷 なるほど。そこまで考えたことはなかった(笑)。

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プロフィール

古谷敏×やくみつる

 

古谷敏(ふるや さとし)
1943年、東京生まれ。俳優。1966年に『ウルトラQ』のケムール人に抜擢され、そのスタイルが評判を呼びウルトラマンのスーツアクターに。1967年には「顔の見れる役」として『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊のアマギ隊員を好演。その後、株式会社ビンプロモーションを設立し、イベント運営に携わる。著書に『ウルトラマンになった男』(小学館)がある。

 

やくみつる(やくみつる)
1959年、東京生まれ。漫画家、好角家、日本昆虫協会副会長、珍品コレクターであり漢字博士。テレビのクイズ番組の回答者、ワイドショーのコメンテーターやエッセイストとしても活躍中。4コマ漫画の大家とも呼ばれ、その作品数の膨大さは本人も確認できず。「ユーキャン新語・流行語大賞」選考委員。小学生の頃にテレビで見て以来の筋金入りのウルトラマンファン。

 
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4分10秒の大激戦で露呈したウルトラマンの致命的“弱点”

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