大阪桐蔭の3度目の春夏連覇を阻む学校はあるのか
ここからは、2022年夏の注目校を見ていこう。
今大会もセンバツと同様に大阪桐蔭が頭一つ抜けている。
下記が予選のスコアと選手成績だ。
◆予選戦績
決勝 :大阪桐蔭 7-0 履正社
準決勝 :大阪桐蔭 8-0 上宮(7回コールド)
準々決勝:大阪桐蔭 8-0 大阪電通大高(7回コールド)
5回戦 :大阪桐蔭 8-0 東海大仰星(7回コールド)
4回戦 :大阪桐蔭 6-0 大阪
3回戦 :大阪桐蔭 7-1 関大北陽
2回戦 :大阪桐蔭 10-0 大手前(6回コールド)
◆主な選手予選成績
・伊藤:打率.370 2本塁打 7打点
・谷口:打率.231 0本塁打 5打点
・松尾:打率.333 3本塁打 4打点
・丸山:打率.435 1本塁打 10打点
・海老根:打率.381 1本塁打 1打点
・田井:打率.462 2本塁打 13打点
・星子:打率.455 0本塁打 6打点
・鈴木:打率.500 0本塁打 6打点
・前田:2試合 12回 防御率0.00
・川原:4試合 10回 防御率0.90
・別所:4試合 20回 防御率0.00
・小林:4試合 5回 防御率0.00
大阪府予選を1失点で勝ち抜いた盤石な投手陣と6点以上を叩き出した打線に隙はない。
投手陣に関しては、右2枚(川原、別所)左2枚(前田、小林)でバランスが良く、継投のバリエーションも豊かである。
打撃陣は、これまでと同様に切れ目がなく、4番に座る丸山はセンバツの時と同様に、チャンスでランナーを返す打撃が光る。唯一の懸念材料としては、センバツで打率.600を残した谷口にあまり当たりが出なかったことだ。それ以外の打者は、3割を超えており、バントなどのミスもない。2012年・2018年に続き3度目の春夏連覇を狙ううえで、死角はない。
その大阪桐蔭の対抗馬となるのは、センバツ準優勝の近江と、5月におこなわれた春季近畿大会で大阪桐蔭に勝利した智辯和歌山である。
近江は、2ヵ月前の春季近畿大会の準決勝では、山田が降板する6回までに2対2と大阪桐蔭を相手に僅差の試合運びをしていた。2021年夏以降、大阪桐蔭相手に大差で負けているものの、山田の疲労感がない状態であれば、勝機は十分ある。
◆大阪桐蔭対近江 直近3試合の対戦成績
2021年夏甲子園:大阪桐蔭4-6近江
2022年春甲子園:大阪桐蔭18-1近江
2022年春季大会:大阪桐蔭11-2近江
◆近江 主な選手成績
・山田:打率.167 1本塁打 6打点
3試合 22回 防御率0.40
・中瀬:打率.467 0本塁打 3打点
智辯和歌山は現在公式戦13連勝中と、波に乗っている。エースナンバーを背負う塩路柊季は春季大会の大阪桐蔭戦では投げていないため、この夏にもし対戦するとすれば大阪桐蔭打線にとって未知の相手として立ちはだかるだろう。
◆智辯和歌山 主な選手成績
・武元:打率.222 0本塁打 1打点
2試合 9回 防御率0.00
・山口:打率.500 3本塁打 7打点
・渡部:打率.600 3本塁打 7打点
・岡西:打率.500 1本塁打 8打点
・青山:打率.438 1本塁打 4打点
・塩路:3試合 19回 防御率0.94
そこに続くのは、昨夏ベスト4の京都国際とセンバツベスト8の九州国際大付だ。
京都国際は、左腕エースの森下瑠大の肘の不安を抱え、右腕エースの平野順大も調子が上がらなったことは懸念材料として上げられるものの、両者とも打撃成績は絶好調。この2人がピッチングの調子を取り戻し、予選でも3試合を投げた森田大翔が試合を作れれば、この夏も上位を狙うことができるだろう。九州国際大付は、予選ではエースナンバーをつけていた香西が体調不良のため、二番手の池田悠舞が34イニングを投げ抜いた。甲子園では、この池田がエースナンバーを背負う形になる。香西が本調子に戻れば、2枚看板で上位に食い込める確率は高い。打線は、チャンスメイク力にたけたトップバッターの隠塚悠と、黒田義信・野田海人・佐倉俠史朗のクリーンナップは今大会トップクラスの破壊力を誇る。
◆京都国際 主な選手成績
・森下:打率.632 3本塁打 13打点
2試合 9回 防御率2.00
・平野:打率.348 1本塁打 6打点
1試合 0回2/3 防御率27.00
・森田:3試合 20回 防御率2.70
◆九州国際大付 主な選手成績
・隠塚:打率.458 0本塁打 3打点
・黒田:打率.348 0本塁打 4打点
・野田:打率.400 1本塁打 5打点
・佐倉:打率.500 3本塁打 17打点
・香西:3試合 9回 防御率2.00
・池田:6試合 34回 防御率2.11
大阪桐蔭を倒すためには、まず打線を抑え込むことが重要なポイントになるだろう。智辯和歌山が春季大会で勝利した際は、前田の立ち上がりを攻め立てて初回に3点を奪い守り切る展開だった。智辯和歌山は最終的に失点を2点に抑え、勝利。いかに乱打戦にもちこませないかがカギになる。
松尾自身も「2巡目でつかまえるつもりでいければと、それぞれ打席が終わった後に投手の情報を伝えて、2打席目以降に心がけています」と語るように、予選の大阪桐蔭打線の傾向としては、1巡目は待球しながら甘い球を狙っていき、目が慣れ始める2巡目以降は、積極性が増すため相手チームが痛打される場面が目立った。そのため、春季大会の智辯和歌山や2018年の大阪府予選準々決勝の金光大阪のように、細かい継投策も一つの手である。
2022年の大阪桐蔭は盤石とはいえ、勝機がないわけではない。絶対王者に対して、他の強豪校はどのように戦うのか。今大会はそこに注目したい。
次回に続く
100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに、感情論や印象論で語られがちな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。3月に6回にわたってお届けしたセンバツ編に続いて、8月は「夏の甲子園」の戦い方について様々な側面から分析していく。
プロフィール
野球著述家。 「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心に100本以上のコラムを執筆している。週刊プレイボーイやスポーツ報知などメディア取材多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターも担当。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』(インプレスICE新書)、『坂本勇人論』(インプレスICE新書)、『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(カンゼン)。