ニッポン巡礼 Web版④

フェノロサが眠る寺

滋賀県・三井寺【後編】

アレックス・カー
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円珍の霊力が美術コレクターを引き寄せる

 

 日本の美術史には海外の有名コレクターが多く登場します。たとえば、私の師であるデヴィッド・キッド。出光美術館にコレクションを売ったことで、最近話題になっているエツコ&ジョー・プライス夫妻。規模はまったく違いますが、私も自分なりに美術蒐集に力を入れ、それが高じて禅や密教についても学んできました。

 その源流は、ビゲロー、フェノロサ、久成の三人から始まっています。いえ、さらに言えば、はるか昔、中国美術蒐集家でもあった円珍から始まった、という見方もできるかもしれません。円珍の霊力もあってか、三井寺には説明のつかないパワーが潜んでいるように思います。

 またフェノロサたちとは別に、密教やインドの仏教経典ヨーガスートラの研究者だったジェームス・ウッズの供養塔も、法明院にはありました。前述したとおり、私は長年、般若心経について調べていて、本も書いています。般若心経は英語で「ハートスートラ」と呼ばれますので、私も「スートラの研究者」の系譜に連なるのかもしれません。

 私は自分の死後、日本のどこに骨を埋めるか、最近考えるようになってきています。「この中に入れたら幸せだな」と、フェノロサ、ビゲロー、ウッズの墓を見ながら、ふと思いました。

 

構成・清野由美 撮影・大島淳之

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 Web版③
ニッポン巡礼

著名な観光地から一歩脇に入った、知る人ぞ知る隠れた場所には、秘められた魅力が残されている。東洋文化研究者アレックス・カーが、知られざるスポットを案内する「巡礼」の旅が始まる。

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ニッポン景観論

プロフィール

アレックス・カー

東洋文化研究者。1952年、米国生まれ。77年から京都府亀岡市に居を構え、書や古典演劇、古美術など日本文化の研究に励む。景観と古民家再生のコンサルティングも行い、徳島県祖谷、長崎県小値賀島などで滞在型観光事業や宿泊施設のプロデュースを手がける。著書に『美しき日本の残像』(朝日文庫、94年新潮学芸賞)、『ニッポン景観論』(集英社新書)、『観光亡国論』(清野由美と共著、中公新書ラクレ)など。

 
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