特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく 第1回

ハビエル・フェルナンデスの演技に、羽生結弦との友情に「ありがとう」

高山真
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 2017年世界選手権の『マラゲーニャ』は、「ハビエルの」という枠を超えて、男子シングルの歴史に残る名作だと思っています。

 冒頭のコンビネーションジャンプ、4回転トウの凄まじいばかりの高さと幅、トリプルトウの着氷後の切れ味。単独ジャンプの4回転サルコーは、跳ぶ前のトランジションがあまりにも自然になめらかに、またスピーディに足を踏み替えているので、「足を踏み替えている」ことを忘れてしまいそうになるほど。リンクの長辺をほぼいっぱいに使ったトランジションから跳ぶトリプルアクセルの着氷の流れと、ドラマティックなアームの使い方にも目を見張りました。

『マラゲーニャ』の世界観とこれ以上ないほどマッチする、フラメンコをベースにした振り付けと、雄大かつシャープなエッジワークとの融合……。

 私はフラメンコダンサーはまったく詳しくありませんが、ホアキン・コルテスの「パッションやセクシーさがほとばしる」ようなニュアンスより、アントニオ・ガデスの「端正さの中にパッションがにじんでくる」ような雰囲気をハビエルから感じました。ひとつハッキリ言えるのは、演技終了後もしばらく圧倒されてしまい、ただただため息をつくばかりだったのを覚えています。

 そして、平昌のフリー『ラ・マンチャの男』。極限ともいえる緊張感が会場の隅々まで満たしていた中でのハビエルの演技は、本当に素晴らしかった。

 冒頭の4回転トウ、4回転サルコーとダブルトウのコンビネーション(サルコーがややこらえた着氷だったため、瞬時の判断でダブルトウに)、トリプルアクセルからトリプルトウのコンビネーション(こちらは本来ダブルトウをつける予定でしたが、4回転サルコーのコンビネーションのリカバリーでトリプルトウに)。

 このトリプルアクセルからのコンビネーションの後の、コレオシークエンスの素晴らしさ! 単に「要素をこなす」だけではない、音楽との調和。

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第2回 
特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。

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プロフィール

高山真

エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。

 
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ハビエル・フェルナンデスの演技に、羽生結弦との友情に「ありがとう」

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