本日2月15日、拙著『羽生結弦は捧げていく』が発売されました。私にとってフィギュアスケートに関する2冊目の本になります。
フィギュアスケートの魅力に心をわしづかみにされたのは、私が9歳のときです。そこからずっと、ただただ「好きだから見ているスポーツ」のことを書かせていただくチャンスをいただくとは、数年前には夢にも思っていませんでした。
活字にかかわる仕事を25年以上続けてきましたが、常に頭の真ん中に置いていることは、
「興味のあること、好きなことを、すでに誰かが書いている形以外の方法で書く。自分の『好き』こそが唯一の正解だと思うような傲慢さを極限まで排除し、押しつけがましくない形で伝わる方法を模索する」
ということ。そして、
「いままでふれてきた本や映画、演劇などに影響を受けるのは自然なこと。しかし、自分の手で何かを書くときは、自分の表現になっているかどうかを誰よりも厳しくチェックする」
ということです。
この2点を、今回も自分なりに意識したつもりです。
いままでの仕事人生で、フィギュアスケートに限らず、さまざまなことをテーマにものを書いてきました。その中で、
「何をテーマにしても、自分よりはるかに詳しく、自分よりはるかに深く大きな愛情を持っていらっしゃる方々が、本当にたくさんいる」
と痛感してきました。
そのことをきちんと自分に言い聞かせつつ、
「せめて、自分なりのリスペクトがきちんと伝えられるか。誤解のない表現で愛情を伝えられているか」
ということに心を砕き、推敲を繰り返して、執筆を進めたつもりです。
羽生結弦というスケーターをはじめ、すべてのスケーター、そしてフィギュアスケートというスポーツは、私にたくさんの、大きな喜びをくれました。
そんな選手たちを、そんなスポーツを、私以上に愛している方々に、小石ひとつくらいの大きさでいい、キラキラした「何か」を、この本から感じ取っていただけたら、本当に嬉しい。
その小さなキラキラが、あなたの心の中でちょっとした、しかし確実にポジティブな化学反応を起こす要因になってくれること……。私が25年あまりの仕事人生で望んでいるのは、その一点のみです。
そして、そのキラキラした小さな粒が、読んでくださった方の心の万華鏡に加わったとき、
「今までとは違った、でも美しい模様が増えたかも」
と思ってくださったら、望外の喜びです。
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『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。