特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく 第7回

『羽生結弦は捧げていく』高山真が見た、フィギュアスケート世界選手権1日目

高山真
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 紀平梨花、音楽が始まってからトリプルアクセルにいくまでの間、緊張が手に取るように伝わってきました。トリプルフリップからのコンビネーションジャンプも、紀平梨花のベストからはちょっと離れたものだったかもしれません。しかしトリプルルッツの踏み切りの鮮やかさ、空中姿勢の美しさ、着氷後のトランジションの流れは本当に、何度見てもほれぼれするばかり。

 私は自分の書き物の中で「たられば」を極力使わないようにしていますが、それでもひとつだけ。

 得点は、「よいクオリティのトリプルアクセルを含めれば、80点を超えるプログラムである」とジャッジたちが評価を下している、ということです。それだけの地力が、紀平梨花にはあります。

「昨年末の全日本選手権のフリーの見事な追い上げよ、もう一度……」

 と、猛烈に期待しているのは、私だけではないと思います。

 そして最終滑走者のアリーナ・ザギトワ。

『捧げていく』の執筆中、ザギトワは必ずしも絶好調とは言えない競技生活を送っていました。しかし私は「ザギトワのピークは、まだ先にある」と書き記しました。

 そのピークを世界選手権という大舞台に合わせてくる。これもまた、ザギトワの強さの大きな要因なのだと見せつけられた思いです。

 フワッと空中に上がってから回転がスタートし、きっちり回りきって降りてくるトリプルジャンプ。それがコンビネーションジャンプの後半のジャンプであるトリプルループでもサラリと実施されているのですから、もう驚くよりほかありません。

 シャーロットスパイラルからカウンターへつなげてダブルアクセル、そして着氷後は反時計回りで跳んだダブルアクセルの回転方向とは逆の、時計回りのターンまだつなげるという、複雑なトランジション。それも「複雑なトランジション」というよりは「美しい振付の一部」としておこなっています。

「技」と「美」の両立に心を砕いたプログラム。それをパワーと可憐さを両立したまま精緻に実施したザギトワ。拍手が鳴りやまないのも、シーズンベストの更新も心から納得です。

 

 そして今日、3月21日はペアのフリーと男子のショートプログラム。何度かこの連載でも書いていますが、私は今日もまた「新しい幸福」を目にすることができると確信しています。

 

 

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特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。

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プロフィール

高山真

エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。

 
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