フィギュアスケートの新シーズンに向けて、さまざまなニュースが報じられています。「シニアのグランプリシリーズは開催される」という報道を目にしました。
開催の方法は例年とはかなり違ったものになるようですが、スケートファンのひとりとして、私は、大会が開催されることをとても喜んでいます。選手たちにとって、「積み上げてきた努力を見せる場所がある」のは、何より素晴らしいと思うからです。そして願わくば、その「努力を見せる場所」が、ひとりでも多くのスケーターに与えられることを祈ってやみません。
新型コロナウィルスが出現してから、フィギュアスケートを含めたスポーツ全般、演劇や音楽などの文化方面のエンタメ…、そういった世界に身を置き、自分自身を高めるために努力を続けている人たちの苦難は、私には想像することすら難しい。
とにかくすべてのことが、今までとはまるで違うのです。大会や公演など、人生を賭けるほどの大きな舞台も、開催されるかどうかが定かではない。練習場所を確保することも一苦労、そして、コーチや先生方に近い距離で教えを受けることも難しい…。
そんな状況の中でも、誰もがくさらず、前を向き、鍛錬を続けている…。
ただただ頭が下がります。
いまの私にできることは、すべてのスケーターを含め、「今までとはまったく違う、この困難な世界で、それでも努力を続けている人々」を全面的に尊敬すること。
そして、新型コロナの治療法やワクチンなどが開発・確率されて、「全面的な尊敬に値する人々」が報われる日が、近いうちに来ることを、強く強く祈ることです。
『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。