対談

「意味をつくる」仕事とは何か【第3回】

対談 佐藤可士和×山口周

佐藤可士和×山口周

会社も一種のアート作品のようになっていく

山口 今、戦略コンサルティングの業界は、グローバルで苦戦しているんです。その構図も、先ほどからのお話と同じだと思います。戦略コンサルの世界では、課題に対して答えをロジカルに突き詰めていくことが重要視されています。でも、そのやり方を究極に得意とするのがコンピューター。つまり、ロジカルに突き進んだら、コンサルはいらなくなるよね、という話に最後はなってしまう。

佐藤 その問いに対して、山口さんが考えるソリューションはどんなことですか。

山口 極論のようになりますが、今後は会社も一種のアート作品のようになっていくのではないかと考えています。

佐藤 面白いですね。

山口 可士和さんは、お仕事をされる場合、クライアントがオーナー企業だと意志決定のスピードが速く、成果を出しやすいとおっしゃっていましたよね。つまり、オーナー企業の経営者にとって、会社とはアート作品ではないか、と僕は思うのです。会社の存在意義をつくり、世の中というギャラリーの中で、展示方法をあれこれ考えて、顧客に自分の考えを表現していく。

佐藤 会社経営に「サイエンス」だけでなく、「アート」が必要なのだ、ということですね。僕も会社は今後、形態と、そして形態以上に意味合いが変わっていくと考えています。

山口 会社は一度、原点回帰するのではないでしょうか。そもそも現代の「会社」の概念って、大英帝国の時代にイギリスで生まれた「東インド会社」が原型で、航海がベースになっています。コーヒーショップなりパブなり、世界の交差点にさまざまな人間が集まっている、と。で、「ここに儲かりそうなアイデアあるぜ」という人がいて、「じゃあオレは金を出す」「だったら、オレは人を集める」と、座組が始まって、プロジェクトを遂行して儲かったら解散、という流れだったんです。

佐藤 「スターウォーズ」に出てくる宇宙の酒場は、そういう情報が行き交う場所でしたね。

山口 そうそう、ハン・ソロがいるような酒場があって、そこにやってくるやつらが、「今度、新しいヤマを張るから船長をやってくれねぇか」と、彼に声をかけてくる。そうやって、ワンプロジェクトで仕事を回していく。

佐藤 僕にとって、「SAMURAI(サムライ)」の設立は、従来型の会社を作ることではなく、まさにプロジェクトの立ち上げだったんです。その意味ではクリエイティブディレクションのプラットフォームでもあり、既存の「会社」の形態にこだわらずに、その時代その時代に合わせた形に、どんどん組み直していきたいと、今も考えています。時代が令和に変わったことを機に、価値転換をさらに図っていきたいですね。

山口 その意味では、いいタイミングで令和になったな、と思います。可士和さんのように、「意味」をつくり、価値転換を仕掛ける方が千人ぐらい出てくれば、社会はずいぶん変わるはずです。ぜひ慶應SFCで「未踏領域のデザイン戦略」の授業を続けて、仕掛け人の量産体制を敷いてください(笑)。

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プロフィール

佐藤可士和×山口周

佐藤可士和(さとう・かしわ)

クリエイティブディレクター。「SAMURAI」代表。1965年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、博報堂を経て2000年に独立。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。多摩美術大学客員教授。ベストセラー『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)など著書多数。2019年4月に集英社新書より、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(慶應SFC)における人気授業をまとめた『世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略』を上梓。

 

山口周(やまぐち・しゅう)

戦略コンサルタント。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーンフェリーなどを経て、現在はフリーランス。著書に『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『世界の「エリート」はなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『劣化するオッサン社会の処方箋』『仕事選びのアートとサイエンス 不確実な時代の天職探し』(以上、光文社新書)など。

 
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