著者インタビュー

「公教育」の意味を考え直すとき

鈴木大裕・教育研究者/NPO法人SOMA副代表理事

鈴木大裕
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 偏差値の高い学校に行き、いい会社に入り裕福になる。それだけが人間の価値なのだろうか?

 日本社会のあり方に対して閉塞感を覚えたのは高校2年のとき、受験戦争真っただ中の1990年のことだった。

「そのままではユニークな人間になれない気がして、ニューハンプシャー州の全寮制高校に留学しました。実は後になって、自分が当時の日本の教育に不満をもっていたんだと気付いたんです」

 そう語るのは、教育研究者の鈴木大裕氏だ。敗戦から長い間、多くの日本人が「アメリカから来るもの=新しくていいもの」というイメージを抱いてきた。アメリカに憧れていたという鈴木氏もそんな一人だったという。

 だが、現地の大学に進学して教育学を専攻した鈴木氏の目には、次第にアメリカの教育がもつ「闇の部分」が映り込んでくるようになった。

 そんな鈴木氏が2016年8月に出版した著書『崩壊するアメリカの公教育 日本への警告』(岩波書店)は、1980年代以降、教育改革を市場原理に委ねた結果、巨大ビジネスマーケットとなったがゆえに変質してしまったアメリカの公教育の実態を生々しく伝えている。2013年冬から季刊誌『人間と教育』(旬報社)に連載してきた記事などをベースにしているが、最新の変化も加筆し盛り込んでいる。 

『崩壊するアメリカの公教育  日本への警告』 鈴木大裕著、岩波書店刊 (写真撮影:伊豆倉守一)

 たとえば、ドナルド・トランプのような「アメリカンファシズム」の台頭は連載当時まだ見えていなかった現象だ。こうした変化を総括し、「世の中は決して良い方向には動いていない」と鈴木氏は指摘する。

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プロフィール

鈴木大裕

教育研究者。1973年神奈川県生まれ。16歳で米ニューハンプシャー州の全寮制高校に留学。そこでの教育に衝撃を受け、日本の教育改革を志す。97年コールゲート大学教育学部卒(成績優秀者)、99年スタンフォード大学教育大学院修了(教育学修士)。その後日本に帰国し、2002~08年、千葉市の公立中学校で英語教諭として勤務。08年に再び米国に渡り、フルブライト奨学生としてコロンビア大学大学院博士課程に入学。2016年より、高知県土佐郡土佐町に移住。

 
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