著者インタビュー

「公教育」の意味を考え直すとき

鈴木大裕・教育研究者/NPO法人SOMA副代表理事

鈴木大裕
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教育研究者・鈴木大裕氏(撮影:内藤サトル)

 2002年から千葉県の公立中学校で教え、公教育への信念を新たにした鈴木氏は、2008年に再渡米、コロンビア大学大学院へ進学した。貧困地区・ハーレムに転居し、娘の学校については「あえて選ばない」ことを決意。人気のない公立学校に通わせた。80%以上の家庭が最低生活水準以下、5人に1人がホームレスの子どもという環境での生活体験があるからこそ、語られる言葉が重みを持って迫ってくる。

「選べる人間が良い選択肢を選んでばかりいたら、公教育は良くなるはずがないでしょう。親と学校が子どものために力を合わせれば、できることはたくさんあるのです」

 この言葉に呼応するかのように、本書後半では2012年にシカゴで起こった教員組合ストライキについても紹介している。民意を無視して行われる教育予算の削減や学校閉鎖に対して、立ち上がった教師たちの行動は、保護者も巻き込み「公」を取り戻す一大運動へと発展した。

「「当たり前」を支えているのは実は我々自身なんです。「学力」とは何なのか、「生きる力」とは何なのか、何をもって「公教育」と呼ぶのかを再度考え直し、大人ひとりひとりが主体的に声をあげていくことが必要だと思います」

 通算16年にわたるアメリカ生活から再び日本へ戻る決意をした鈴木氏。2016年11月、人口800万人を超える大都会ニューヨークから一転、四国の過疎地である高知県土佐郡土佐町への赴任が決まった。

「これからは、国政から忘れ去られた地方から都市に向かって、新たな「幸せ」の価値観や『成功』のかたち、そして教育のあり方を発信していきたいと思っています」

 今後は小さなコミュニティから、「公教育とはどうあるべきか」という根源的な問いに対し、新たな答えを導き出してくれることに期待したい。

 

(文責:小泉まみ)

※季刊誌「kotoba」26号著者インタビューを一部修正の上、転載しています

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プロフィール

鈴木大裕

教育研究者。1973年神奈川県生まれ。16歳で米ニューハンプシャー州の全寮制高校に留学。そこでの教育に衝撃を受け、日本の教育改革を志す。97年コールゲート大学教育学部卒(成績優秀者)、99年スタンフォード大学教育大学院修了(教育学修士)。その後日本に帰国し、2002~08年、千葉市の公立中学校で英語教諭として勤務。08年に再び米国に渡り、フルブライト奨学生としてコロンビア大学大学院博士課程に入学。2016年より、高知県土佐郡土佐町に移住。

 
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