著者インタビュー

「視点」の発見とは、見えていなかったものを見えるようにすること

佐藤可士和
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見えていなかったものを見えるようにする

── 佐藤さんはデザインを考えるときの思考のプロセスとして①課題発見→②コンセプト→③ソリューションの3ステップを挙げています。
 はい。まず①はどの「視点」で問題を捉えるか。②はコンセプトの耐久性があるかどうか。考え方の方向性ですね。そして③のソリューションは、具体的に課題を解決するアイデアと実行プランです。この3点がそろっていると本質を突いたいい作品ができる。
 しかし、この3点がそろった作品を作るのは、学生たちにはかなりハードルが高い。
 学生たちに「本当の平和」というテーマを出したときに、〈笑い Pandemic〉というコピーで作品を仕上げてきたチームがあったんです。彼らはプレゼンテーションでムービーを表現ツールにしたんですが、その完成度がイマイチで、みんなの評判はそれほどでもありませんでした。でも、僕は「笑い」にフォーカスしたことは、いろいろな意味で本質を突いていて、視点としてはすごくいいなと思ったんです。やはり争いが起きるのは怒りや憎しみがあるからだ、それを消すには笑いだ、という視点。これはすごく大きいコンセプトだと思う。
 みんなどこに視点を見つけるか相当悩んだと思います。「平和」という概念も非常に難しくて、学生たちはその反対にある「戦争」というものを体験していない。最初の授業のときに、もしかすると今は戦争の形態が変わってきていて、今現在でも戦争が起きてないとはいえないかもしれない、という話をしたんです。そこで、平和って何だろうと熱い議論が展開されて、そのチームは「笑い」にたどり着いたわけです。
 ただいくら着眼点がよくてもアウトプットの精度が低いとよく見えない。その反対に凡庸な視点でもものすごく仕上げがいいと人の心をとらえるということもある。そういうことも彼らは授業を通して体験したと思います。
 僕としては、一番重要なのは視点の見つけ方だと考えています。プレゼンテーションや表現力は、練習や経験を積めばできるようになります。しかし視点の発見のほうは、抽象的な思考を整理して、いろいろなことを考えなければならないので、かなり高度な作業です。だからこそ学生たちには難しい抽象的なテーマを投げて、思考する訓練を積んでほしいと思っているんです。
── 佐藤さんご自身は、アイデアは天から降ってくるのでも、地から湧いてくるのでもなく「いきなりそこにぱかんと光が当たる」という言い方をなさっていますね。
 そうですね。いろいろディスカッションして、ヒアリングして、仮説を出し、一生懸命視点を探していると、あるときぱかっとそこに光が当たったみたいに見えるようになる。視点というのは、全く新しいものを出すというよりも、見えていなかったものを見えるようにする、そういう感覚なんです。その意味ではまだ見えていない「未踏」のアイデアはたくさんあると思っています。

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プロフィール

佐藤可士和

さとう・かしわ クリエイティブディレクター。1965年東京生まれ。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。博報堂を経て2000年「SAMURAI」設立。ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランド戦略のクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュース、武田グローバル本社、日清食品関西工場の工場見学エリアの空間デザインなど、近年は大規模な建築プロジェクトにも多数従事している。著書に『佐藤可士和の超整理術』『佐藤可士和の打ち合わせ』等多数。慶應義塾大学特別招聘教授。

 
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