著者インタビュー

「視点」の発見とは、見えていなかったものを見えるようにすること

佐藤可士和

クリエイティブの分野はAIには渡せない

── 今現在もそうですが、近未来には人間の仕事がほとんどAIに取って代わられるという危惧があります。そんな時代においてAIと一線を画すクリエイティビティーをどうお考えですか。
 一番大事なことは、人間が感じていることです。人間は動物なので、動物的に感じていることってたくさんあると思うんですが、現代社会ではそれをストレートに出すことが難しくなってきていますよね。感情的なことをビジネスの場で言うとロジカル(論理的)じゃないと言われたりして。でも、そうやって感じることを封印していると、ファクト(事実)を積み重ねていくロジカルなAIがあっという間に仕事をかっさらってしまうし、実際そうなりつつあります。
 でも、じつはAIは万能に見えて、絶対何か欠落した部分があるはずなんです。抜け漏れが絶対ある。ビッグデータを妄信するのではなく、動物的な勘や身体的な感覚で、あれ、これは何かおかしいぞと感じることがすごく大事なんだと思う。そういうビッグデータから抜け漏れるようなことにこそ、視点の発見があるんじゃないでしょうか。「あなたはこれが好き」とネットに提案されるものを、そうだそうだと思っているだけではなく、「人間とは何か」を考えていきたいですよね。
── 本当にそうですね。SFCの授業の今年のテーマは決まりましたか。
 ええ、決まっています。まだ学生への発表前なので具体的には言えませんが、今までのテーマをさらに広げて地球規模の課題です。でも、どんなに難しいテーマでも、頭から煙を出すほど考えれば何か答えは出るんだということを、今まで履修したほぼ全員が理解してくれたと思うんです。その意味で未来は全然暗くないと思えます。だって最初は未踏領域のあんな大きいテーマを与えられて、途方に暮れるというか、触ることすらできなかったのが、仲間たちと「わからねえ」とか言いながら、ああでもないこうでもないと、答えまでたどり着けるようになった。これはすごいことです。きっとまた自分たちとの接点を見つけて、面白い発見をしてくれると思っています。

「青春と読書」2019年5月号より転載

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プロフィール

佐藤可士和

さとう・かしわ クリエイティブディレクター。1965年東京生まれ。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。博報堂を経て2000年「SAMURAI」設立。ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランド戦略のクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュース、武田グローバル本社、日清食品関西工場の工場見学エリアの空間デザインなど、近年は大規模な建築プロジェクトにも多数従事している。著書に『佐藤可士和の超整理術』『佐藤可士和の打ち合わせ』等多数。慶應義塾大学特別招聘教授。

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