ウーマン村本が日本人に突きつけるもの〈前編〉

沖縄在住ノンフィクションライターの極私的村本論

渡瀬夏彦
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 ウーマンラッシュアワー村本大輔が発した「沖縄ネタ」がフジテレビ系「THE MANZAI」で放送され(2017年12月17日)、全国の視聴者に衝撃を与え、多くの沖縄の視聴者の心を揺さぶってから、はや半年が過ぎた。その後、村本は、1月3日、3月25日、6月17日と、那覇市で3度の独演会「大演説」を開催している。わたしもその3回の「大演説」に立ち会い、毎回大笑いしつつ、様々なことを考えさせられている。

 沖縄にとって今年は特別な年だ。

 非常に重要な「選挙イヤー2018」の火ぶたが切られ、南城市長選挙(1月21日)と名護市長選挙(2月4日)では、対照的かつ象徴的な結果がもたらされた。

 南城市長選挙では、自公に維新が相乗りし楽勝ムードだった現職の古謝景春(こじゃ・けいしゅん)氏が、「オール沖縄」陣営(社民・社大・会派おきなわ・共産・自由・民進)推薦の新人、瑞慶覧長敏(ずけらん・ちょうびん)氏の猛追を受け、65票の僅差で敗れた。

 逆に名護市長選挙では、翁長知事と二人三脚で政府と対峙し、市民の信頼が厚かった現職・稲嶺進氏(オール沖縄会議共同代表)が、自民・公明・維新が積極的に支援した新人の渡具知武豊(とぐち・たけとよ、前市議)氏に大差を付けられて敗れた。さらに、自公の組織力動員力をフル稼働させた3月の石垣市長選挙、4月の沖縄市長選挙では、中山義隆氏、桑江朝千夫(くわえ・さちお)の両現職が強さを見せつけた。

 9月の名護市議会議員選挙をはじめとする市町村の選挙から最重要の11月の沖縄県知事選挙に至るまで、これから沖縄県民にとっては選挙を意識せずにはいられない日々がつづく。この国の政府と国民から、軍事基地を差別的に集中させられている沖縄では、政治はいつだって身近にある。だからこそ沖縄県民は、安倍政権に対する「NO!」の意思も他の都道府県民とは比べ物にならないぐらい明確に示してきた。

 いや、果たしてそうか。

 こんなに理不尽な仕打ちに遭いつづけている沖縄の人たちが、いま基地問題を考えることにくたびれ果て、もしかしたら政治から遠ざかってしまう傾向に陥っていないか。そんな相反する思いにとらわれるほど、2018年の沖縄は揺れている。こういう年だからこそ、村本大輔が昨年暮れから年明けにかけてわたしたちに投げかけた「素朴な疑問」の本質を、あらためて咀嚼する意義がある。わたしは今、そう感じている。

 村本大輔という人物を通じてわたしたちは、「沖縄限定ではなく日本全体の問題であるはずの基地問題」を広く世に問うために、いったいどんなヒントを得たのだろうか。あるいは、得ることができなかったのだろうか。以下は、年頭の二つの選挙戦をくぐり抜けながら、一定の時間をかけてそのことを考え続け“発酵”させた、極私的ルポである。

 ディープな情報も書くが、オフレコ話の暴露といった部分は少しもない。あの「THE MANZAI」のネタのインパクトの強さから、年明け1月3日の沖縄での記者会見、その夜のソロ公演「大演説」の面白さ等、できる限り詳しく書くつもりなので、多少話は長くはなるかもしれない。けれど、村本大輔や、あるいは彼と出会った人の話、彼の語りに立ち会ったわたしの実感などを赤裸々に記していくので、新鮮な話の連続になるはず。ぜひお付き合いください。

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プロフィール

渡瀬夏彦
ノンフィクションライター。1959年埼玉県生まれ。高校3年のときに「与那国島サトウキビ刈り援農隊」に参加して以来、約28年間沖縄通いを続け、2006年から沖縄県民となる。『銀の夢 オグリキャップに賭けた人々』で講談社ノンフィクション賞とJRA馬事文化賞を受賞。他の著書に『修羅の華 辰吉丈一郎がゆく』(講談社)、共著書に『誰が日本を支配するのか!? 沖縄と国家統合』(マガジンハウス)など。基地問題からスポーツ(琉球ゴールデンキングス、琉球コラソン、FC琉球、高校野球、ボクシング等)、書評まで、幅広いジャンルで雑誌、新聞等にドキュメントやコラムを執筆。関心は、脱基地、脱原発から、沖縄文化、自然、芸術・芸能・音楽、スポーツまで多岐にわたり、Facebook やTwitterでも情報発信。現在、沖縄を舞台にした複数のノンフィクション作品を構想、執筆中。「沖縄戦・精神保健研究会」会員。

 
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