データで読む高校野球 2022 第1回

センバツ甲子園の「不平等さ」と圧倒的優勝候補、大阪桐蔭を読み解く

ゴジキ

100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに、感情論や印象論で語られがちな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。全6回にわたって、3月18日(金)からスタートする「春の甲子園」こと選抜高等学校野球大会(以下 センバツ)について様々な側面から分析していく。

第1回目は、センバツ出場校の選出方法の問題点と、今大会の優勝候補、大阪桐蔭の戦術を解説する。

 

センバツ大会の定義とは

今年のセンバツは、東海地区の選考で、昨秋の東海大会で優勝した日大三島(静岡)とベスト4の大垣日大(岐阜)が選出され、同大会で準優勝した聖隷クリストファー(静岡)が落選したことが物議を醸した。準優勝校を落選させたことについて、鬼嶋一司大会委員長が「甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んだ」と説明していることには、高校球児やファンは不信感を抱いたのではないだろうか。ただ、これまでの選考にも、さまざまな問題は生じてきた。本記事ではセンバツの選考の問題点についてみていきたい。

「夏の甲子園」は、各都道府県で地方大会を勝ち抜いて優勝した学校が、その都道府県代表となる。 だが、「春の甲子園」は、各都道府県の予選を勝ち抜いた高校野球連盟推薦校の中から、秋季地区大会がおこなわれる(区分けは、北海道、東北、関東、東京、東海、北信越、近畿、中国、四国、九州の10)。その大会成績や、地域的なバランスを考慮して選ばれるのだが、基本的に「一般選考枠」は各地区大会の優勝校・準優勝校といった勝ち進んだ順番で選ばれ、それにくわえベスト4からベスト8に進出した学校を選考する。今回はこの過程で準優勝した高校が選出されなかったことが、問題になった。

 

選出方法に残る「不平等さ」

ただ、その選出方法の不平等さは、前から疑問視されていたことに留意が必要だろう。センバツ甲子園の出場枠は32校分ある。それぞれ「一般選考枠」(28校)・「明治神宮大会枠」(各秋季地区大会で優勝した10チームによっておこなわれるトーナメントの優勝校の枠。優勝チーム所属地区は翌年の枠を1つ多く獲得できる。1校)・「21世紀枠」(3校)にわけられる。この三つのうち、毎年賛否両論になるのが「21世紀枠」だ。この枠は下記の条件で選ばれる。

 

1.秋季都道府県大会のベスト16以上(※加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上)

2.以下の推薦例のいずれかに当てはまること

・自然や災害など困難な環境の克服

・学業と部活動の両立・近年の予選で好成績ながら、甲子園に出場できていない

・創意工夫した練習で成果を上げている

・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている

 

さらに、理念としても「センバツの招待大会としての特性を生かし、高校野球の模範的な姿を実践している学校を選ぶ」と称されており、一見、徹底的に制度化された公平な選出方法とも思える。

しかし、蓋を開けて見れば、選出する条件や理由づけは毎年曖昧であり、選考に一貫性があるとはいえない。

さらには、21世紀枠の高校の戦績が芳しくないことにも注目したい。

下記がこれまでの21世紀枠の出場校と勝敗のデータだ。

 

◆ ベスト4

宜野座(沖縄/’01)利府(宮城/’09)

 

◆ 3回戦

華陵(山口/’08)

 

◆ 2回戦敗退

鵡川(北海道/’02)一迫商(宮城/’05)

都城泉ヶ丘(宮崎/’07)安房(千葉/’08)

成章(愛知/’08)向陽(和歌山/’10)

城南(徳島/’11)遠軽(北海道/’13)

松山東(愛媛/’15)釜石(岩手/’16)

具志川商業(沖縄/’21)

 

◆初戦敗退

安積(福島/’01)松江北(島根/’02)

柏崎(新潟/’03)隠岐(島根/’03)

一関一(岩手/’04)八幡浜(愛媛/’04)

高松(香川/’05)真岡工(栃木/’06)

金沢桜丘(石川/’06)都留(山梨/’07)

彦根東(滋賀/’09)大分上野丘(大分/’09)

山形中央(山形/’10)川島(徳島/’10)

大館鳳鳴(秋田/’11)佐渡(新潟/’11)

女満別(北海道/’12)石巻工(宮城/’12)

洲本(兵庫/’12)いわき海星(福島/’13)

益田翔陽(島根/’13)土佐(高知/’13)

小山台(東京/’14)海南(和歌山/’14)

大島(鹿児島/’14)豊橋工(愛知/’15)

桐蔭(和歌山/’15)小豆島(香川/’16)

長田(兵庫/’16)不来方(岩手/’17)

多治見(岐阜/’17)中村(高知/’17)

由利工(秋田/’18)膳所(滋賀/’18)

伊万里(佐賀/’18)石岡一(茨城/’19)

富岡西(徳島/’19)熊本西(熊本/’19)

八戸西(青森/’21)三島南(静岡/’21)

東播磨(兵庫/’21)

 

※2020年の中止になった大会は除く。

 

実施初年度の2001年の宜野座と、2009年の利府が4強入りを果たしたが、ほとんどの高校が一回戦敗退という結果になっている。21世紀枠で選出された高校の通算成績は、18勝55敗。で勝率にすると.247。昨年までの10大会(11~21年)の成績だけを見ると、5勝32敗で勝率.135である。

もちろん、21世紀枠の出場校の戦績が芳しくないからといって、その意味が否定されるわけではない。ただ、筆者の立場としては、21世紀枠が曖昧な基準で運営されていることには疑問が残る。秋季大会も夏の予選と同じくトーナメントの制度を採用しているにもかかわらず、選出においては「それらの結果を参考資料とし、選考委員が選出する」というのはあまりにも不平等ではないだろうか。曖昧に「頑張っているから」という理由で選出するのであれば、頑張っていない高校球児などほとんどいないはずであり、高校野球に対して失礼にあたるとすら思える。

 

 

「強いチーム」でも甲子園に出られない

また、センバツにおけるエリア制度の問題も挙げられる。さきほども記したように、甲子園大会出場までの道のりは、都道府県大会で上位2チーム(地域によっては3チーム)が地方大会に進む。そこからさらに出場枠に向けて勝ち上がる形式だ。

秋季大会の地区別の大まかな出場枠は下記の通りである。

北海道地区から1校、東北地区から2校、関東地区から4.5校、東京地区から1.5校(関東か東京かどちらかから+1校で計6校)、北信越地区から2校、東海地区から2校、近畿地区から6校、中国地区から2.5校、四国地区から2.5校(中国か四国かどちらかから+1校で計5校)九州地区から4校の合計28校。

合計32校の枠の中で28校の枠が一般選考枠という形で勝ち上がった実力校である。

その中でプラス1校の枠が増えるのが明治神宮大会枠だ。地区予選を優勝した10校が集った明治神宮大会で優勝した地域は、さらに1枠増えるのである。昨年秋に大阪桐蔭が明治神宮大会に優勝したため、近畿枠が7校に増えた。

それでも秋季大会の地区の枠が限られていることによって、強豪校でも落選してしまう傾向があることを指摘しなければならない。たとえば今年の四国地区大会では、ベスト4に入った名門の明徳義塾も落選。監督である馬淵史郎氏は、1991年夏から2010年夏までの甲子園初戦は春夏合計20連勝を記録した。その後も、9勝5敗と甲子園で戦い慣れている名将だ。この名将の初戦の戦い方を楽しみにするファンもいたのではないだろうか。

さらに、実力があってもなかなか勝ち上がることができないのが近畿地区である。今年でいうと、近江高校はたしかな実力がありながらもベスト8に留まり、甲子園出場を果たすことができなかった。近江には、夏の甲子園で大阪桐蔭や盛岡大付を抑えるなどの活躍を見せてベスト4に導いた「二刀流」の山田陽翔が在籍しており、注目が集まっていた。山田は秋の予選大会は右肘痛で打撃に専念していたためベスト8に留まったが、センバツに出場して入れば今大会の注目選手になることは間違いなかっただろう。

このように、各地区で出場校が限られているうえに、選出基準の曖昧さによって、都道府県大会で好成績を残したのにもかかわらず選出されない学校が出てしまう制度でもある。それだけ狭き門であるうえに、21世紀枠はさらに不透明な選考基準で選ばれている。つまり「理念」の名のもとに、好成績を残したチームでも甲子園には出られず、実力や成績も芳しくないチームが甲子園に出てしまえるのが現状のセンバツの制度なのである。

もちろん、「選抜高等学校野球大会」なのだから「選抜」された学校が出るべきなのだろう。しかし、勝負ごとにおいてトーナメントという制度を採用したうえでの「選抜」である以上、成果を残したチームが割りを食う制度になってはいけないのではないか。筆者は、21世紀枠を廃止し、あらためて選考制度は再考されるべき段階にあると感じる。

 

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第2回  
データで読む高校野球 2022

100年以上にわたり、日本のスポーツにおいてトップクラスの注目度を誇る高校野球。新しいスター選手の登場、胸を熱くする名勝負、ダークホースの快進撃、そして制度に対する是非まで、あらゆる側面において「世間の関心ごと」を生み出してきた。それゆえに、感情論や印象論で語られがちな高校野球を、野球著述家のゴジキ氏がデータや戦略・戦術論、組織論で読み解いていく連載「データで読み解く高校野球 2022」。3月に6回にわたってお届けしたセンバツ編に続いて、8月は「夏の甲子園」の戦い方について様々な側面から分析していく。

関連書籍

アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論

プロフィール

ゴジキ

野球著述家。 「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心に100本以上のコラムを執筆している。週刊プレイボーイやスポーツ報知などメディア取材多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターも担当。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』(インプレスICE新書)、『坂本勇人論』(インプレスICE新書)、『アンチデータベースボール データ至上主義を超えた未来の野球論』(カンゼン)。

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