「疎外感」の精神病理 第2回

コロナ禍と疎外感

和田秀樹

アフターコロナで疎外感が悪化することを防ぐ

このようにコロナ禍はさまざまな形で疎外感の病理を生み出しました。

人に表情が見られるコミュニケーションを避けたい人々

人を見たら感染者に思えてしまい、近づくのが不安な人々

人に会わない方が楽なので、それを続けたい人々

本当は人に会いたいのに、感染が収まっても、そうならないで不満や不安を抱えている人々(これにしても、相手方が感染恐怖のため、会うのを避けるケースもあるでしょう)

ほかにもいろいろなパターンがあるでしょうが、さまざまな形で人間の心のありようをコロナ禍が変えてしまったのは確かなことのようです。

アフターコロナで、経済やインバウンドやエンターテインメントや飲食産業などさまざまなものを立て直さないといけないでしょうし、政府もそれにかなりのお金をつぎ込むことでしょう。

しかしながら、心の再建、人間関係の再建という声はほとんど聞かれません。

でも、それをやらないと本当の意味でコロナ禍が終わったとは思えないのです。

これには、時間も人手もかかります。

また社会の在り方も考えないといけません。

たとえば、学校や職場にくるのが当たり前という価値観を、それがストレスになる人は在宅ワークを、人と会う方がメンタルにいいと思う人は職場にくる、などの選択ができるように変えていくことも重要です。どちらがよくて、どちらが悪いのではなく、個人の資質に合わせた方が合理的でしょう。人に会わないことが好きな人は引きこもりというレッテルを貼られることが多かったわけですが、私はそれが必ずしも病的とは思っていません。

人にはそれぞれの生き方がある。でも寂しいときにはやはり人が必要だし、一人ではうまく生きていけないときには人に頼っていいという当たり前の価値観が再建される日を心から願っているのです。

 

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「疎外感」の精神病理

コロナ孤独、つながり願望、スクールカースト、引きこもり、8050問題……「疎外感」が原因で生じる、さまざまな日本の病理を論じる!

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プロフィール

和田秀樹

1960年大阪府生まれ。和田秀樹こころと体のクリニック院長。1985年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現職。主な著書に『受験学力』『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』『70歳からの老けない生き方』『40歳から一気に老化する人、しない人』など多数。

 

 

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