「疎外感」の精神病理 第3回

疎外感恐怖の現象学

和田秀樹

スクールカーストと現代型いじめ

 

 この流れの中で第1回でも問題にしたスクールカーストなる学校体制が生まれます。

 人気者でリーダーシップをとる1軍と、それに合わせてクラスの雰囲気を作っていくフォロワーの2軍があり、仲間外れの3軍がいるという構造がスクールカーストと言われるものです。

 ここで問題になるのは2軍の存在です。

 2軍の子どもたちはリーダーシップを取れるわけでも、オピニオンリーダーになれるわけでもないのですが、2軍でいる限りは1軍の子どもも2軍の子どもも友達でいてくれるし、仲間外れにならないで済むのです。

 友達の数が多いほどいいという学校文化の中ではとても都合のいいポジションということになります。

 ただし、いったん3軍に落とされると、一気に友達の少ない「ダメ人間」と烙印を押されてしまいます。子どもにとっては3軍に落とされることは大きな不安なのです。

 実際、2007年に出された教育評論家の森口朗氏による『いじめの構造』という本では、現代型のいじめはスクールカーストの3軍に落とすことだと明記されています。

 2軍の子どもたちは2軍という地位を維持するために1軍の考えに従い、クラスのトレンドに従うことになります。あるアイドルがトレンドとなったら、みんなでフォローする。あるゲームがトレンドなら、みんなでそれを楽しむという具合です。

 このようなことが全国的に起こっているから、アイドルであれ、映画であれ、ゲームであれ、メガヒットが連発し、子どもの数が減っているのに空前のセールスになるのでしょう。

 3軍に落とされたり、仲間外れになるのが怖いので、クラスのトレンドとは違う「自分の言いたいこと」は言えなくなります。もちろん、言いたいことを言って、クラスで受けたり、人気者になる可能性はなくはないのですが、受け入れられなければ、仲間外れになるリスクもあります。そのリスクを取らないのが習い性になってしまうということなのでしょう。

 このような形で、疎外感恐怖が学校の中で植え付けられていくのです。

 さらにいうと、1993年ごろから始まった観点別評価という調査書(内申書)の評価システムで、ペーパーテストで満点をとっても、教師が「意欲・態度」がダメと評価したらかなり低い内申点をつけられることになりました。推薦入試やAO入試も含めて、学力より、上の人間にどう見られるかのほうが自分の将来を決めるのですから、受けのいい人間になりたいと思うのは、ある種の必然と言えるものです。

 学力がトップクラスの人間は、わが道を行くという選択肢もあったのですが、文科省の方針ということで東京大学の理科Ⅲ類まで入試面接をやるようになったのですから、「受けのいい人間にならないといけない」という子どもたちの強迫観念は強まるばかりです。

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「疎外感」の精神病理

コロナ孤独、つながり願望、スクールカースト、引きこもり、8050問題……「疎外感」が原因で生じる、さまざまな日本の病理を論じる!

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プロフィール

和田秀樹

1960年大阪府生まれ。和田秀樹こころと体のクリニック院長。1985年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現職。主な著書に『受験学力』『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』『70歳からの老けない生き方』『40歳から一気に老化する人、しない人』など多数。

 

 

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