【短期連載】ある音楽家の "ステイホーム" 第8回

ステイホーム ~~内と外の繋がる世界②~

「弾き籠る」生活の日常と非日常に思いを馳せる

黒田映李
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世界中が新型コロナウイルスに翻弄され続けるなか、気づけば終わりに差しかかりつつある2020年。今なお正常化からは程遠い日々が続く一方で、近所への買い物でさえ自粛を促され「不要不急の外出」を控えた4~5月は既に、記憶の後景へと退きつつある。未だ収束しないコロナ禍の延長線上に、Go To キャンペーンが喧伝される現在もまた存在するのだと考えれば、違和感は一層深まるばかりだろう。

去る5月、ゴールデンウィークが明け緊急事態宣言は延長された。その時に我々は何を思ったのであったか。ピアニストが瑞々しいタッチで綴った当時の日常から、その移ろいに思いを馳せる。

 

「1、オンラインレッスン」

 相変わらず続けて行っている、オンラインレッスン。個人生徒さんだけでなく、とある音楽大学受験準備学校で教えている生徒さん方も、そこに加わった。

 

 画面の向こう側には、ずっと家で過ごすことのストレスを抱えているのかな…という、心配な姿が見える日もある。そんな時には、何時もお客さんがそこにいて演奏を聴いてくれている感覚を持つこと。自分の耳がその役割を果たしてくれて、作品をちゃんと伝えられる技術を磨き、知識としても作品を知っておくこと。大変な環境下だけれど、探究心を忘れてはいけないよと生徒さんに語りつつ、まるで自分に言い聞かせている。

 

 とてもとても小さな生徒さんには、オンラインは厳しい環境として続いているかもしれない。小さな画面にインしていなければ、こちらからは向こうの様子を把握することができない。それでもたまに見せてくれる笑顔と成長は嬉しく、ほっとする。

 

 オンライン環境下での成長は毎週、全員に見ることができている。内に秘める音楽への強い意志とまっすぐさに気付くと、こちらがエネルギーをもらうこともある。

 一方、家で自主練習を続けている生徒さんとも時に繋がり、お家時間にピアノを続けて弾いていますというメッセージをもらうと、安心感を抱いている。全員の共通項として“ピアノ”があるけれど、再び対面レッスンできることへの道のりは、まだ遠いように感じている。

 

「2、オンライン飲み会」

 一週間の中に数回訪れるようになった、オンライン飲み会のある夜。

 

 じっくりとメニューを練って、それぞれが衣装まで決めて座り、始まるもの。

 突然のお誘いで、今そこにあるものでいいから持ってきて座りなさいと、始まるもの。

 どのスタイルにも魅力があって、皆の元気な姿を見ることができて、安心へと繋がっている。

 世の中ではオンライン飲み会を同窓会として活用することが流行っているそうで、それぞれが離れた場所から、今だからこそある時間を共有しているそうだ。

 また、断り切れず会の切り上げ方が難しいという点からは既に、オンライン飲み会反対の声が上がってきているという。

 

 

 プライベート100%な友人仲間とのオンライン飲み会は、まるで修学旅行。お店にいては展開できないような元気すぎるトークも飛び交う。もし万が一に盗聴されることがあったならば、盗聴した側がびっくりひっくり返るかもしれないくらいの元気のよさだ。そんな場ではお酒もすすみ、赤ら顔がモニターに、空瓶がモニターの横に並ぶ。

 

 自粛下で深酒してしまうことが少しずつ取り立たされている、目下。そんなこと、自己コントロールに依りけりだと見ていたものだが、今はもう胸にしみて分かる現象となってしまった。オンライン飲み会後の良い加減はいつも終電で引きずるそれそのままで、翌日の後悔もまた、二日酔いのそれである。

 移動がなくリラックスして臨めるという点においては、この飲み会の形は“ステイホーム”後も保存されるべきなのかもしれない。

 

 ただ、このシステムに関しては、節度を忘れないことと、いつ何どきも家にお酒をストックしておく必要がある。

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【短期連載】ある音楽家の

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、その最初期から影響を被った職業のひとつが、芸術を生業とする人たちであった。音楽、絵画、演劇……。あらゆる創作活動は極めて個人的な営みである一方で、大衆の関心を獲得することができぬ限りは生活の糧として成立し得ない。そんな根源的とも言える「矛盾」が今、コロナ禍によって白日の下に晒されている。地域密着を旨とし、独自の音楽活動を続けてきたあるピアニストもまた、この「非日常」と向き合っている。実践の日々を綴った短期連載。

プロフィール

黒田映李

愛媛県、松山市に生まれる。

愛媛県立松山東高等学校、桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ科を卒業後、渡独。ヴォルフガング・マンツ教授の下、2006年・ニュルンベルク音楽大学を首席で卒業、続いてマイスターディプロムを取得する。その後オーストリアへ渡り更なる研鑽を積み、2014年帰国。

現在は関東を拠点に、ソロの他、NHK交響楽団、読売交響楽団メンバーとの室内楽、ピアニスト・高雄有希氏とのピアノデュオ等、国内外で演奏活動を行っている。

2018年、東京文化会館にてソロリサイタルを開催。2019年よりサロンコンサートシリーズを始め、いずれも好評を博す。

故郷のまちづくり・教育に音楽で携わる活動を継続的に行っている。

日本最古の温泉がある「道後」では、一遍上人生誕地・宝厳寺にて「再建チャリティーコンサート」、「落慶記念コンサート」、子規記念博物館にて「正岡子規・夏目漱石・柳原極堂・生誕150周年」、「明治維新から150年」等、各テーマを元に、地域の方々と作り上げる企画・公演を重ねている。 

2019年秋より、愛媛・伊予観光大使。また、愛媛新聞・コラム「四季録」、土曜日の執筆を半年間担当する。

これまでにピアノを上田和子、大空佳穂里、川島伸達、山本光世、ヴォルフガング・マンツ、ゴットフリード・へメッツベルガー、クリストファー・ヒンターフ―バ―、ミラーナ・チェルニャフスカ各氏に師事。室内楽を山口裕之、藤井一興、マリアレナ・フェルナンデス、テレーザ・レオポルト各氏、歌曲伴奏をシュテファン・マティアス・ラ―デマン氏に師事。

2009-2010ロータリー国際親善奨学生、よんでん海外留学奨学生。

ホームページ http://erikuroda.com

 

 

 
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