内村航平、羽生結弦。ともにスポーツ界の歴史に大きく名を刻んでいるふたりが、オリンピック連覇という大偉業を成し遂げてもなお、あらたな高みを目指して現役生活を続けてくれること。私は何よりも、このことに大きな感謝の気持ちをいだいています。
内村は2020年の東京オリンピック出場を目標にしていることを明言していますし、羽生も来シーズンも競技を続行することを表明しています。
彼らがあらたな高みを目指すことは、観客が「まだ知らない、新しい世界」を見ることができる、ということでもあります。同時に、そのスポーツに打ち込んでいる若い才能たちが、あらたなインスピレーションを受け取る機会が増える、ということでもあるのです。
内村や羽生ほどの選手であっても、故障を抱えてしまう。スポーツの世界の厳しさを感じずにはいられません。ただ、
「トップ中のトップを極めた人にしかわからないほど、高い場所にある目標」
が、内村にも羽生にもあるのですから、観客である私が望む(というか祈る)のは、
「その目標を目指すためにも、これ以上のケガに見舞われないこと」
だけです。
すでにレジェンドと呼ぶにふさわしいふたりが新しい伝説を見せてくれたとき、観客は、今までまったく味わったことのない「何か」を受け取ることができる。すでに充分すぎるほどの「Legacy」を持っているふたりから、若い選手たちがより多くのものを受け取ることができるのです。そのことだけははっきりしています。
その瞬間が訪れることを、ただただ楽しみに待っていたいと思います。
素晴らしかった四大陸選手権のことは、次回で書かせていただけたらと思っています。そして、世界選手権ももうすぐ。私自身の体調が回復している幸運に感謝しつつ、次なる「何か」を必ず見せてくれるだろう選手たちに感謝する日々です。
※2月15日に発売の『羽生結弦は捧げていく』は、電子書籍も同日配信となります。
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『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。