ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」 第2回

沖縄の問題が日本人にとって“他人事”であり続ける理由

田原総一朗×村本大輔
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村本:マイケル・ムーア監督の『華氏119』という映画が話題になっています。その中で人々の「無関心」というのが、いかに恐ろしいかを説いているんですね。マイケル・ムーアは、「ヒラリーとトランプなら、絶対トランプが勝つと思っていた。なぜならトランプは貧しい白人のところにも選挙運動に行っていたのに、ヒラリーは行かなかった。リベラルの人たちは、LGBTQとか、人種差別を受けている人に対しては呼びかけるけれども、“貧しい白人というマイノリティ”は一切無視していた。そういう人たちの票が全部トランプのほうにいったんだ」と。

日本でも、例えばネット右翼とかを「一種のマイノリティ」だと考えた時、リベラルの人たちはそれを無視し続けている気がするんですが、そういう「無関心」が逆に彼らの広がりを生んでしまうんじゃないですかね。

田原:小川榮太郎という評論家がいるでしょ。以前、彼が朝日新聞批判の本を出したんだけど、その中身には間違いと思われる箇所もあったから「朝日新聞の記者たちは小川に対してきちんと反論するべきだ」と言ったんです。ところが、驚いたことに、彼らは全く反論を出さないばかりか、小川をいきなり訴えた。言論じゃなくて司法に訴えたわけ。それで朝日の幹部に「なんで反論しないんだ。訴えるなんておかしい」と言ったら、「小川なんてレベルが低い、だから反論するに値しない」って言うんだよ。「そんなことをすると、『小川や産経新聞の阿比留はレベル低いから、あんなやつは相手にするな』と、逆に社内で干されるんだ」とね。

でも、こんなふうにリベラルがネトウヨを「バカ」だとか「話の通じない頭のおかしな連中」だと決めつけて「無視」してしまうのは「差別意識」なんだよね。僕は小川でも阿比留でも全部討論しますよ。そもそも、ちゃんと討論すれば負けるわけないんだし。ところで、せっかく今、あなたが「マイノリティ」の話をしてくれたらから、ここで沖縄の辺野古基地建設問題にも触れておきたいんだけど、沖縄の人が辺野古の基地建設に反対するのは当然で、面積は日本全体の0.6%しかないところに、米軍基地の70%以上がある。こんなもの沖縄県民が納得できるわけない。

村本:でもある意味、沖縄ってLGBTQとかマイノリティの人たちと同じで、少数過ぎてテレビの全国区のニュースにほとんどならないですよね。

田原:実は、沖縄の問題を扱うと視聴率が低いんです。これは本土の人間が悪いんだけど、彼らは沖縄の問題は関係ないと思ってる。当然、日本の米軍基地の70%以上を沖縄が背負わされているという事実すら知らないし、それが日本全体の問題だという意識もない。

村本:僕はそれがすごく腹立たしくて。僕の地元の福井県は、日本で一番原発があるところなんです。ところが、沖縄は民意できっちりノーと言うのに対し、おおい町の町長選なんか、候補が2人とも原発賛成なんですね。原発がないとメシ食えないから。だから、僕が原発反対とテレビで言ったときに地元で飲んでたら、地元の偉い人に「君、あんまりそういうこと言っちゃいけないよ」って言われるんです。

田原:原発がなくなると、働き場所がなくなっちゃう。

村本:そうです、そういうふうに、ノーと言えなくなる状況になっていて、原発について疑問すら持ってはいけないという、ある意味「弱者ビジネス」みたいなところがある。だからこそ、沖縄とか福井とか、日本のために負担してるところに関しては『朝生』でもガンガン取り扱って欲しいんですよ。

田原:原発の一番問題は、今や自民党に原発の責任者がいないことだと思う。例えば、今年7月に政府がエネルギー基本計画を出した。これによれば、2030年代に原発は30基稼働することになっている。ただし、30基稼働させるためには、これから新しい原発を新設しなければいけない。ところが、現実に「原発新設が可能だ」なんて考えている自民党の現職は誰もいないわけです。

では、誰もいないのに、なんでこんな無責任な話になるのか? 自民党に原発問題を取り仕切る責任者がいないからですよ。誰も責任を取る必要がないから、何だって言える。僕が歴代経済産業大臣に「あなたたちはなんで原発を進めるんだ?」と聞いたら、何と答えると思う? みんな「田原さん、原発のことは勘弁してください」と言うんですよ。

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ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」

お笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏が、毎回、有名・無名のゲストを迎えて、政治・経済、思想・哲学、愛、人生の怒り・悲しみ・幸せ・悩み…いろいろなことを「なんでそんなことになってるの?」「変えるためにはどうしたらいいの?」とひたすら考えまくる連載。

プロフィール

田原総一朗×村本大輔

 

田原総一朗

1934年、滋賀県彦根市生まれ 早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所 テレビ東京を経て、77年にフリーに。現在は政治・経済・メディア・コンピューター等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。テレビ朝日系で87年より『朝まで生テレビ』、89年より2010年3月まで『サンデープロジェクト』に出演。テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞した。2010年4月よりBS朝日にて「激論!クロスファイア」開始。02年4月より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講、未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたる。05年4月より17年3月まで早稲田大学特命教授。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ』(講談社)『AIで私の仕事はなくなりますか?』(講談社+α新書)他多数。

村本大輔

1980年、福井県おおい町生まれ。小浜水産高校中退後、NSC入学、2000年デビュー。2008年に中川パラダイスとウーマンラッシュアワーを結成。2013年、THE MANZAI 優勝。昨年末のTHE MANZAI で、原発・沖縄・東京オリンピック・熊本地震などをテーマにしたネタが話題になり、以後、災害被災地や沖縄をはじめ全国で独演会を開催。今年のTHE MANZAIでも政治ネタを取り上げ注目を集めた。

 

 
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