ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」 Round2-1

狩猟を通して見えた「生きる」ということのリアル

幡野広志×村本大輔

村本:ちなみに、幡野さんが狩猟を始めたきっかけは?

幡野:僕、3・11の震災後に始めたんです。あのとき、関東は揺れの被害はそこまで大きくないし、千葉県の一部を除けば、津波の被害もなかったけれど、震災で物流は止まって、都市機能もストップした。普段、都会で暮らしていると安全で安定していて快適ですが、ひとたび、ああいう大きな地震に見舞われると、その状態が簡単に崩れるわけです。

あのとき、それを目の当たりにして、「これでは、もしものときに何もできない。だったら、自分で自活できる術を知っておいたほうがいいな」と思って。例えば肉って、誰かが育てて、誰かが殺して、捌いて、輸送して、調理して、食べるという流れになっていますけど、それをイチから、自分で獲って、捌いて、料理して、食べるまでをやりたくなった。

©Hiroshi Hatano

村本:ふつう、それで猟銃持って山には出ないですよ(笑)。極端過ぎる(笑)。それはもう『北斗の拳』の世界になったときにやることでしょう。(笑)。でも、その行動力がすごい。

幡野:「食べるってどういうことなんだろう」って知りたかったんです。人間って、食べないと生きていけないでしょう。だから「生きるってどういうことなんだろう」と考えたときに、「他の命をもらわなければ人間は生きていけない」と思って、それを確認したかった。ネットで得られない情報って、行かないと分からないし、やらないと分からない。

プラス:現代会の「食肉の流通システム」って、実は「家畜などの動物を殺して命をいただくという事」に対する現実感を薄める分業システムになっているのかもしれませんね。幡野さんはそれを全部一人でやってみることで、食べるとは、生きるとはどういうことかを考えようとした……と。

幡野:自分が肉を食べているくせに、狩猟は残酷だと批判したり、解体すること、加工することをかわいそうだと批判的なことを言ったり人がいるんですけど、それって“分業”の悪い部分が出ていると思います。生き物を殺すことへの罪悪感を与えなさ過ぎて、自分が何を食べてるか気付かないというか、肉を工業製品とでも勘違いして、命を食べているという認識がない人が少なくない。

次ページ   誰かのおかげで生きているのに、その誰かに対する「ありがとう」がない!
1 2 3
 第4回
Round2-2  
ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」

お笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏が、毎回、有名・無名のゲストを迎えて、政治・経済、思想・哲学、愛、人生の怒り・悲しみ・幸せ・悩み…いろいろなことを「なんでそんなことになってるの?」「変えるためにはどうしたらいいの?」とひたすら考えまくる連載。

プロフィール

幡野広志×村本大輔

幡野広志

1983年、東京生まれ。2004年、日本写真芸術専門学校中退。2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事、「海上遺跡」で「Nikon Juna21」受賞。2011年、独立し結婚する。2012年、エプソンフォトグランプリ入賞。2016年に長男が誕生。2017年多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。著書『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)。作品集『写真集』(ほぼ日)。

村本大輔

1980年、福井県おおい町生まれ。小浜水産高校中退後、NSC入学、2000年デビュー。2008年に中川パラダイスとウーマンラッシュアワーを結成。2013年、THE MANZAI 優勝。昨年末のTHE MANZAI で、原発・沖縄・東京オリンピック・熊本地震などをテーマにしたネタが話題になり、以後、災害被災地や沖縄をはじめ全国で独演会を開催。今年のTHE MANZAIでも政治ネタを取り上げ注目を集めた。

 

集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル
プラスをSNSでも
Twitter, Youtube

狩猟を通して見えた「生きる」ということのリアル