ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」 Round2-2

「教育」だと言って怒る大人が子どもをダメにする

幡野広志×村本大輔

幡野:自分が「感じること」が「考えること」や「知ること」に繋がるという話をしましたけれど、例えば、僕は猟をやっていたので、トロフィーハンティングのこともいろいろと勉強したんです。

トロフィーハンティングって、欧米とかの金持ちがアフリカで、ライオンとかキリンを趣味で、レジャーやスポーツの感覚で獲る行為で、当然、それに対する批判は多いんですけど、あれって実際は「ハンティング料」として、地元の政府や管理団体に、すごく高い金額を支払うんです。それにハンティングに行くときは現地の人を雇うから「雇用」にもなってて、仕留めた獲物の肉も、全部、現地の人間が食べるから、それも彼らの報酬になる。

しかも、そういう「合法的な仕組み」を作らないと、結局は非合法な密猟が増えるだけで、税収が無いと、そういう不法な密猟者を取り締まる仕組みすら維持できなくなる……。これも調べてみないと分からなかった。そういう話って、実はいっぱいあるんですよね。

村本:秋田で子熊が撃たれた時に、東京の人からすごいクレームがあったんです。でも、その村の人が熊によって恐怖を感じているという想像力がそこにはない。「分業」の話もそうで、それが完全に他人事になってしまうのは「想像力」が働かないからだと思います。

例えばニュースを見ていても、本当は誰かがその情報を取ってきてくれて、放送して、コメンテーターがしゃべって……とやっているから、僕たちは日々、いろんなニュースを知ることができる。それがきちんとわかっているなら、危険を冒して「紛争地のリアル」を取材に行っている安田純平さんのことをあれほど叩けないと思うんです。だって、安田さんは「ニュースの猟師さん」なわけですから。

それを、「わざわざ危険を冒してまで、日本人のフリージャーナリストが戦地までいかなくても、ニュースなんかアメリカのメディアとかBBC、外国のジャーナリストの報道を流せばいいじゃないか?」という人がいて、それじゃぁ「外国メディアのフィルターを通した情報」ばかりになってしまうというコトには気づかない。

幡野:情報って、実際にその場に行って、本人自身が体験しないと、自信をもって伝えられないですからね。

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ウーマンラッシュアワー村本の「考える人」

お笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏が、毎回、有名・無名のゲストを迎えて、政治・経済、思想・哲学、愛、人生の怒り・悲しみ・幸せ・悩み…いろいろなことを「なんでそんなことになってるの?」「変えるためにはどうしたらいいの?」とひたすら考えまくる連載。

プロフィール

幡野広志×村本大輔

幡野広志

1983年、東京生まれ。2004年、日本写真芸術専門学校中退。2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事、「海上遺跡」で「Nikon Juna21」受賞。2011年、独立し結婚する。2012年、エプソンフォトグランプリ入賞。2016年に長男が誕生。2017年多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。著書『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)。作品集『写真集』(ほぼ日)。

村本大輔

1980年、福井県おおい町生まれ。小浜水産高校中退後、NSC入学、2000年デビュー。2008年に中川パラダイスとウーマンラッシュアワーを結成。2013年、THE MANZAI 優勝。昨年末のTHE MANZAI で、原発・沖縄・東京オリンピック・熊本地震などをテーマにしたネタが話題になり、以後、災害被災地や沖縄をはじめ全国で独演会を開催。今年のTHE MANZAIでも政治ネタを取り上げ注目を集めた。

 

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「教育」だと言って怒る大人が子どもをダメにする