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亡き父の足跡を辿り、あの「戦争」について考える

『鉄路の果てに』著者・清水潔氏インタビュー 【前編】

清水潔
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頼もしい旅の「相棒」との珍道中⁉

――新刊の『鉄路の果てに』は、私的な旅行記のパートと近代日本が起こした戦争についての記述が織り交ぜられた構成になっていて、徹底した調査報道によって事実を明らかにしてきた清水さんのこれまでの著作とは少し趣が違いますね。

清水 言ってみれば、古い地図をみつけたおっさんが旅をする。その途中でそれぞれの場所の過去に触れつつ「あの戦争はなんだったんだろう」ということを考えていく本です。旅に同行してもらいつつ、さらに過去にタイムスリップする感じで読んでもらえたら、と思っています。

 ファクトとしての事実はきちんと押さえた上で、本として読みやすくするための物語性も盛り込み、要所要所にはわかりやすい地図も入れました。

――清水さんが旅に出られたのは2019年1月。抑留兵たちが苦しんだシベリアの冬を体感したいということに加え、旅の「相棒」である作家の(あお)貴木鬼木木()(しゆん)さんが「シベリア鉄道から雪の大平原を見たい」と前からおっしゃっていたこともきっかけのひとつだったそうですね。今回、なぜ青木さんと一緒に旅をされたのでしょうか。

清水 元々、テレビ東京の敏腕記者?(笑)だった青木センセイとは仕事を通じて意気投合し、数え切れないほど一緒に縄のれんをくぐってきた仲なのです。

 お互いの仕事がらみの旅もこれまで何度も一緒にしてきて、センセイからは「シベリア鉄道に乗りに行きましょうよ」と誘われていました。

「いつかは乗りたいけど、全区間乗ったら1週間もかかるし……」となかなか踏み切れないでいたのが、父が遺した地図をみつけたことで、ようやく彼の誘いに応じる気持ちになれたんですね。

 青木センセイは北京や香港の特派員をしていたので中国語が喋れますし、大学ではロシア語専攻で旧ソ連やロシアにも何度も行っているということだったので、私にとっては頼りになる旅の道連れでした。

 本書でも一人旅だったら間が持たないようなところで青木センセイにご登場いただいています。ただ、そのセンセイが送ってきた『鉄路の果てに』の感想は「作中に出てくる『青木センセイ』については、書かれていることはすべて事実だが、もう少しカッコよく化粧してくれてもいいのではないかと思った。重厚篤実にしてニヒルな影を持つ知性派という私が目指すイメージとほど遠い気がする」でした(笑)。

 ともあれ、彼のおかげで楽しい旅になりました。父の戦争を辿るという重いテーマはありつつ、やはり旅は旅で楽しくありたかったので。

作家・青木俊氏 (写真提供:清水潔氏)

――おふたりは道中で美味しそうなものをたくさん召し上がっていますよね。特に印象に残っている料理などはありますか?

清水 今回、私にとっては初体験のロシア料理がとても新鮮で、特にシベリア鉄道の食堂車で食べたボルシチは本当に美味しかったですね。ちょっと酸味があるテーブルビートのスープにクリームが入っていて、「これは美味い」とガツガツ食べてしまいました。

ロシア料理のボルシチ (写真提供:清水潔氏)

 他にも、小さな餃子のようなペリメニなど美味しい料理がたくさんありましたし、出発前から「ロシアには黒パンと川魚の酢漬けぐらいしかない」と散々おどかしていた青木センセイも、「美味い、美味い」と食べていましたよ(笑)。

 考えてみれば、彼がロシアに行ったのは数十年前の話ですから、その間に味が洗練されていて当たり前なんですよね。

ロシア料理のペリメニ (写真提供:清水潔氏)

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プロフィール

清水潔

1958年東京都生まれ。ジャーナリスト。日本テレビ報道局記者・特別解説委員、早稲田大学ジャーナリズム大学院非常勤講師などを務める。新聞社、出版社にカメラマンとして勤務の後、新潮社「FOCUS」編集部記者を経て、日本テレビ社会部へ。著書は『桶川ストーカー殺人事件――遺言』『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―』(共に新潮文庫)、『「南京事件」を調査せよ』(文春文庫)など。2020年6月放送のNNNドキュメント「封印〜沖縄戦に秘められた鉄道事故~」は大きな反響を呼んだ。

 
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