プラスインタビュー

なぜ本は「3冊セット」で読むべきなのか

「本」から時代の特徴を読み取るコツとは
斎藤美奈子

――今回の2冊の本も、そういう意味での「本へのアクセスガイド」なんですね。

『忖度しません』のほうは、そのときどきの政治の話題、地方社会やジェンダーの問題、文学と社会のかかわり、そして番外編の「新型コロナウイルスが来た」の章まで、きわめて幅広いテーマを扱っていますが、どんな問題も関連書がコンパクトに「3冊セット」で紹介されているので助かります。

斎藤 こちらは様々な社会問題を考えるための本ですね。

いまはどうしてもインターネットの情報だけに頼りがちだし、テキストを読むにしても、せいぜい雑誌や新聞止まりになりがち。でも、どんな問題でも人によって多様な捉え方がある。だからとりあえず3冊は読もうよ、と。

探してみると、どんなニッチな問題にも関連書籍が必ず出ている。そのなかからとりあえず3冊読めば、少し視野が広がったり、考えが深まったりする。「何かについて知ろうと思ったら、とりあえず関連本を3冊」。これは忙しい社会人にもおすすめです。

社会問題だけじゃなくて、料理でも音楽でもスポーツでも、あらゆるジャンルの本が出ているわけで、何をするのにも書籍を活用しない手はないですよ。

私自身、この連載に関しては、最終的にはテーマに沿って3冊に絞りますが、その前に最低でも5〜6冊は目を通す。そのなかから面白かった本を一つ決めたら、残りの2冊にはなるべく違う観点のものを、むしろ敵対的な意見の本を選んで入れるようにしました。

――3点セットのキーとなる「最初の1冊」は、どこで発見することが多いですか。

斎藤 新聞の書評や書籍広告も見るし、テーマがはっきり決まっているときは、「そもそもこの本、まだ出てるんだろうか?」とネットで検索をかけることもありますが、やはり最後は本屋に行きますね。

この連載とは別にいくつかの媒体で定期的に書評を書いているので、取り上げる本を決めるのが大変なんですよ。借金取りに追われるように、いつも本を探しています。「今日は本の買い出しをするぞ」と決めたら、いくつも本屋さんをハシゴするんですが、そのときは大規模書店だけでなく、必ず中小の本屋にも足を伸ばしています。

大規模書店でばかり探していると、どうしても「本の洪水」に呑まれてしまう。でも中小規模の本屋さんの平台は、それぞれがお店の価値観を反映した「セレクトショップ」になっている。だからそこを見ると、何がいま売れているかだけでなく、本屋さんがどんな本を売りたいと思っているのかもわかる。小さな駅前書店の平台にいま何が乗っているのかという情報が私にはとても大事なんです。

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プロフィール

斎藤美奈子

文芸評論家。1956年、新潟県生まれ。児童書等の編集者を経て、1994年に文芸評論『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で第一回小林秀雄賞受賞。他の著書に『紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』(ちくま文庫)、『モダンガール論』(文春文庫)、『学校が教えないほんとうの政治の話』(ちくまプリマ―新書)、『日本の同時代小説』『文庫解説ワンダーランド』(いずれも岩波新書)、『中古典のすすめ』(紀伊國屋書店)、『忖度しません』(筑摩書房)など多数。

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なぜ本は「3冊セット」で読むべきなのか