対談

栗山英樹×佐山和夫 これからは「守備の九刀流」?

WBC優勝監督と殿堂入り作家が語り合う「野球のSDGs」・前編

四球を出したら、走者もひとつ進塁する

佐山 結局、「野球が退屈だ」というのは、点があまり入らないからなので、それを増やせばいいということになります。大リーグでは、ここ15年連続して三振率が上昇しています。ヒット数より三振数の方が多いことも。このままでは野球という人気ゲームも、いつかはバスケットボールに抜かれるだろうという意見もあります。バスケットでは勝利への決定的な瞬間と思われる得点シーンが何度もあるのに対し、野球はそうじゃない。まったく比べものになりませんから。

 そこで、もっと得点機を増やせということからか、ウォーク(walk=四球)を改良せよとの意見も多い。その中に「ウォークを二つに分けるべきだ」というものがあります。つまり、まったくストライクがこなかったウォークと、1球でもきたウォークの二つに分ける。そして、前者には「打者に二塁までの進塁を与えてはどうだろうか、というのです。

栗山 なるほど。ストレートのフォアボールにはペナルティーを与えるような。 

佐山 そういうことですね。ホームランを打つかもしれない打者に打つ機会さえ与えないのは、それほど罪深いとするわけです。もうひとつ、ウォークの改革論があります。ご存じのように、ウォークは9球から始まり、徐々にその数を減らしてきたのですが、最も初期の手探りの時代には、投手がウォークを出すと、打者だけでなく塁上の走者はすべて「テイク・ワン・ベース」、塁をひとつ前へ進めたこともあったらしい。「そのルールに戻れ」という声もあるのです。

栗山 ということは、ランナーが二塁にいて、ウォークを出したら、一、三塁になるわけですか?

佐山 そう。三塁にランナーがいたらホームイン。全員ウォーク。つまり、点数が入りやすい。

栗山 点は入りやすいですけど、守るほうとすれば、ランナー三塁でフォアボール出したら、「てめえ何フォアボール出してんだよ!」ってことになりますね(笑)。一回、そういうルールで試合やってみたいです。

佐山 やってみたら面白いと思う。

後編へつづく)

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