プラスインタビュー

異例のヒット続出! なぜ東海テレビのドキュメンタリー映画は、何度も観たくなってしまうのか?

東海テレビ・プロデューサー 阿武野勝彦氏インタビュー
阿武野勝彦

──いえ、映画化されてドキュメンタリーとしては異例のヒットという作品も多数あります。『人生フルーツ』は観客動員が26万人というドキュメンタリーとしては異例の数字です。リピーターも多かったらしいですね。

そうみたいですね。札幌では、1カ月に1度上映してくれているし、東京や地方でもどこかでやっているという感じで、公開から2年11カ月も経っているのに、今も映画館上映してくれていますね。自主上映会も全国で500件以上開催されているんです。『人生フルーツ』のほかにも、仲代達矢さん、樹木希林さん出演の『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(13年)という作品も、自主上映のロングランが続いています。

「背骨」があるからブレない

──名張毒ぶどう酒事件に関しては『ふたりの死刑囚』(16年)、『眠る村』(19年)と、劇場映画化されたものだけで3作品。映画化されてないものも『毒とひまわり』(10年放送)など数本ありますね。それだけ強い思い入れがある?

『眠る村』(監督・齊藤潤一 鎌田麗香/2019年公開) (C)東海テレビ放送

 名張毒ぶどう酒事件は、僕たちのドキュメンタリーのいわば「背骨」です。齊藤潤一君が、名張毒ぶどう酒事件をテーマに、『重い扉』(06年)という、再審がなかなか開かれないというドキュメンタリーを作ったのですが、その時、「裁判所がおかしくなっているんじゃないでしょうか。裁判所に取材に行きたい」と言ったんです。で、企画書を持って裁判所に行ったら、密着取材をオーケーした。それで現役の裁判官を長期に撮影した『裁判長のお弁当』(07年放送)というドキュメンタリーが出来ました。09年に裁判員裁判が始まる直前ですね。その後、立て続けに司法シリーズを撮るようになって、09年には検察庁にも入って『検事のふろしき』という作品を撮ったんです。できないというのは思い込みで、ダメと思わずに動いてみる、という企画の立て方になっていきましたね。

取材は自由。自分から「ノー」を言う必要はない

──『裁判長のお弁当』を撮ることで、裁判所内での人脈を築いたり、壁を突破していきたいという思いがあって、「お弁当」という全く関係ないように思えるテーマで撮ったということですか。

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プロフィール

阿武野勝彦

東海テレビ放送ゼネラルプロデューサー。1959年静岡県生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻進学。1981年東海テレビ放送にアナウンサーとして入社。89年記者に異動。98年営業に異動。2002年報道制作局部長に。日本記者クラブ賞(09年)、芸術選奨文部科学大臣賞(12年)などを受賞。

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