福島は世界に復興をアピールする“ショールーム”と化した

五輪聖火リレーコースを走ってみた! 第1回

烏賀陽弘道
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 次に川内村へ行ってみた。人工的なJヴィレッジの風景とは打って変わり、モリアオガエルの産卵地が天然記念物に指定されているという山村である。この村も、福島第一原発事故の数日後には、全村民が強制的に避難させられ、5年間戻れなかった。

 富岡消防署川内出張所の前を出発。すぐそばには農産物の直売所「あれ・これ市場」や「かわうちの湯」という温泉施設、2019年春に開店したという真新しいベーカリー。のんびり、のどかな感じだ。またペダルを必死にこぐ。今度は下り坂だ。ラクだ。涼風吹き抜ける緑豊かな道を3分も走ったら、ゴールの川内中学校前に到着してしまった。

 ここにも、原発事故や避難を偲ばせるものは何もない。この村は他の浜通りの町とは違い、避難解除後の帰還率は71%と高い。なのに人の気配がまったくない。

 中学校の隣には避難解除後の2016年4月にできたピカピカの屋内プール「もりたろうプール」があり、看板ではゆるキャラのカエルが水しぶきをあげている。そのあたりにも人影がない。夏休みのせいのか。あるいはコロナのせいなのか。

 村のあちこちに点在しているので見えにくいのだが、震災後に「インフラ整備」の目的で新しく作られた施設はいろいろある。コンビニやドラッグストア、クリーニング店など生活に必要な商店をまとめた施設。特別養護老人ホーム。公営住宅。温水プールもそんな施設のひとつである。密集していないので「ショールーム」という外見にはなっていない。

 プールの隣に学校があったので覗いてみた。が、校舎の前には雑草が茂り、人気がない。「大智学園高等学校」と玄関横に出ている。2006年に開校した私立高である。が、東日本大震災以来、生徒は戻ってこないまま閉校になった。

 東日本大震災当時、村には保育園・小中学校合わせて221人の子どもがいた。それが2018年には約45%に減少した。いま村は、小中学校を9年制の学校に統合し、保育園も敷地に合わせた学校を2021年春に開校させる計画だ。

4番目のコース。消防署から川内中学校までの1.2キロのコース。最初は平坦で後半は下り坂

消防署は芝生のヘリポートがあり、開けた敷地

スタートしてすぐ右側に、かわうちの湯という温泉施設がある

長い下り坂を気持ちよく下る。自転車だと楽だが、走ると大変かも

夏休みのせいのか、川内中学には人影がない

ゴール。1990年に作られた校舎。なかなか大きくてきれいだ

2016年4月にできたもりたろうプール。水中トレーニングの会員募集中だった

もりたろうプールの近くにあった大智学園高校は一斉避難によって閉校に

緑と川のきれいな川内村。村全体の帰還率は71%と高いが、小中学校児童は45%程度にとどまっていて、若い村人の減少率が高い

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プロフィール

烏賀陽弘道

うがや ひろみち

1963年、京都府生まれ。京都大学卒業後、1986年に朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て、1991年から『AERA』編集部に。1992年に米国コロンビア大学に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号取得。2003年に退社して、フリーランスの報道記者・写真家として活動。主な著書に、『世界標準の戦争と平和』(扶桑社・2019年)『フェイクニュースの見分け方』(新潮新書・2017年)『福島第一原発メルトダウンまでの50年』(明石書店・2016年)『原発事故 未完の収支報告書フクシマ2046』(ビジネス社・2015年)『スラップ訴訟とは何か』(2015年)『原発難民』(PHP新書・2012年)     

 
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