フィギュアスケートの世界では、すでに2019-20年シーズンがスタートしています。この3月に、さいたまスーパーアリーナで開催されたフィギュアスケートの世界選手権は「昨シーズンの試合」ということになりますが、私は今でも、折にふれ見返す日々を送っています。男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンス、すべての競技に数えきれないほどの見どころがある、素晴らしい大会でした。
今回は、羽生結弦を中心に男子シングルのショートプログラムを振り返っていきたいと思います。書きたいことが山のようにありまして、どうしても長くなってしまいますので、近日中にアップ予定のフリー編との2部構成にさせていただきます。
今回と次回で、2018-19年シーズンの、各選手の演技の総括的な振り返りもしますので、拙著『羽生結弦は捧げていく』からの一部抜粋があることをご了承ください。
◎ショートプログラム
◆羽生結弦
2018年ロシア杯でのケガから復帰して、最初の演技となったショートプログラム。何度か書いていることですが、羽生結弦がオリンピック二連覇という偉業を成し遂げた後でも、なおも競技者としてのキャリアを続けてくれていることを、私は何よりも感謝しています。レジェンドスケーターのひとり、アレクセイ・ヤグディンが、
「オリンピックを連覇し、(プロに転向したとしても)アイスショーのオファーはたくさんあるはずなのに、それでも彼は戦い続けている」
とコメントしていますが、私もその言葉に心から賛同する立場です。
私としては、ただただ羽生にこれ以上のケガがないこと、そして、この世界選手権が終わった後に羽生(というよりも、すべての選手)が「おおいに得るものがあった」と思えるような大会になることを願いながらの観戦となりました。
では羽生結弦のショートプログラム、要素の実施順に、私が感嘆したところを挙げていきたいと思います。
『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。