ついに万博会場へ(2025年4月14日)
少し歩くと、奇抜な形をしたパビリオンと、その向こうに木造の大屋根リングが見えてきた。大きなミャクミャクのオブジェがあって、記念写真を撮っている人が大勢いた。
その背後に大屋根リングが見える。見上げるようなすごい高さだが、その上にはたくさんの人影がある。そちらの方へ向かおうとすると、すぐ脇で、大阪の食材を使ったクラフトビールが売られているのが目に入った。パンを使ったヴァイツェンスタイルのビールと、みかんを使ったフルーツエールスタイルのビールの2種類が販売されていて、どちらも1200円(税込)とのこと。酒をよく飲む者として、万博会場でどんなお酒がいくらぐらいで販売されているか、気になるところだったので「なるほど、これぐらいの値段はするか」と思う。
近くに「大阪ヘルスケアパビリオン」があり、横山市長が半年前のイベントで説明していた「25年後の自分の姿を見る」とか「モンスターハンターの360度体験」といったプログラムを体験するのには事前予約が必要だが、それ以外の展示は予約なしでも見られるようだった。列もほとんどない状態だったので中に入ってみる。吉村府知事が体験している模様がニュースになっていた「人間洗濯機」やiPS細胞で作られた「心筋シート」が展示されていて、「テレビで見た通りだ」と思う。
館内にパビリオンに協賛する企業が出展する「ミライの食と文化」というフードコーナーがあって、大阪メトロの出展ブースで生ビールが500円で販売されているのを見つけた。「この金額なら躊躇なく飲める!」と、それを買って大屋根リングの下を歩く。屋根が日陰になるので、少し涼むことができた。会場内での会計には現金を使うことができず、すべてキャッシュレス決済で行うことになっている。私はクレジットカードで支払うことにした。
階段でリングの上まで登ってみる。一周が約2㎞もあるとのことで、輪の反対側を歩いている人の姿は粒のように小さくしか見えないほどだ。特徴的なデザインのパビリオンを見下ろすことができ、なるほどこれは壮観だと思う。しかし、遮るものが何もないため、4月中旬(この日の大阪の最高気温は20度ほどになると予想されていた)の日差しでもかなり厳しく感じる。海風が通るのでだいぶましだが、真夏が心配になる。
また、通路脇の植栽の発育が間に合っていないのか、だいぶ寂しい状態だったのと、海沿いエリアではやけにユスリカが飛んでいて気になった。自然をコントロールすることの難しさを感じる。
気の済んだところで地上に降りる。大坂城が江戸時代に再建される際に資材として切り出されたものの使用されることのなかった通称「残念石」を使ったことで注目を集めたトイレなどを眺めた後、会場内に複数ある「コモンズパビリオン(共同館)」に入ってみる。大型の量販店を思わせるシンプルな構造の建物で、その中に複数の国と地域が出展している。パビリオンの区分でいう「タイプC」で、割り当てられる敷地は狭いが、独自にパビリオンを建設する必要もないため、最低限の費用で出展できる。
私が入ったコモンズパビリオン「コモンズD」にはパレスチナの展示ブースもあり、イスラエルとの紛争の影響を受けて展示品の輸送が遅れているという理由で、取材時には展示物が何もない状態だった。
コモンズパビリオンの中は複数の国と地域が、それぞれの方法で文化や歴史をPRしており、民族衣装や楽器を展示したり、雑貨を並べて販売したり、スタッフが来場者と会話したりして、賑やかな様子だった。
プロフィール

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。