スペインへ逃げてきたぼくのはしっこ世界論 第3回

東アジアの友人とタパスを食べに行く

飯田朔
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 「国際交流」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、お互いの文化を知ってよいところを認め合う、そんなイメージではないだろうか。異文化に身を置く者同士が、語り合い、互いの話に目を輝かせる…。美しく、だが一方でどこか形式ばった印象もある。

 しかしながら、本連載の筆者である若き文筆家は、東アジアからきた若者同士で「お国の悪口」に花を咲かすという。そして、そんなリラックスした会話を通じて、ふと、それまで気づくことのなかった日本の一面に気づかされるというのだ。

 「世界のはしっこ」、スペインから贈る瑞々しい文化論。

 

1 東アジアの同世代たちとの交流

 スペイン、サラマンカにきて意外にも面白かったのは、ぼくと同じように留学にきた台湾・中国・韓国などの東アジアの学生たちと出会えたことだ。

 ぼくはいま語学学校の共同アパートに住み、スペイン語を勉強しにきたいろいろな国の人たち(大学生から年長者まで)と共に暮らしている。ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、アメリカ大陸など様々な地域の人たちと出会ったが、その中でやはり東アジアからきた人たちは数が多い。

 さて、「同じ東アジアの」といってもお互いの言語は話せないし、英語が流暢でない人が多いので、スペイン語を使って会話をする。台湾・中国・韓国の学生たちは、コミュニケーションの取り方から遊び方、料理の具材にいたるまで日本人と様々な共通点があり、いまさらながら驚かされることが多い。またかれらのうちには幼少期に日本の漫画やゲームに親しんで育った人が多く、そういうサブカルチャーをきっかけに距離を縮められることもある。スペイン語で話していても、かれらとは同じ田舎から出てきた知り合い同士のような気分になったりもする。

各々の料理を持ち寄り、友人たちと食卓を囲む

 もちろん、ぼくが持っている「常識」とかれらひとりひとりのそれとが違っていることは多々ある。それを「差異」として尊重することが大切さであるとか、あまり「同じ」ところばかり見て同一視するのがよくないことは分かっているが、それにしても、これだけ共通点があるのになぜ自分はいままでそれを知らなかったのだろう、という率直な驚きがあった。

 また、それだけでなく、いま東アジアの国々は経済的にも、カルチャー面でも、多少の違いはあれど、ほぼ同じ程度の「豊かさ」を持ちつつある、そういう印象も受ける。今後は隣りの国の者同士でこれまで以上に何か一緒に取り組んだり、面白いことをやれるんじゃないか、という予感がする。ぼくはサラマンカにくる前に映画『スパニッシュ・アパートメント』を観て、EU各国の若者が出会い、盛り上がる2000年前後の様子に強い印象を受けたが、いまだったらアジアの国々の若者が出会う映画を撮れそうだ。

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 第2回
スペインへ逃げてきたぼくのはしっこ世界論

30歳を目前にして日本の息苦しい雰囲気に堪え兼ね、やむなくスペインへ緊急脱出した飯田朔による、母国から遠く離れた自身の日々を描く不定期連載。問題山積みの両国にあって、スペインに感じる「幾分マシな可能性」とは?

プロフィール

飯田朔

塾講師、文筆家。1989年生まれ、東京出身。2012年、早稲田大学文化構想学部の表象・メディア論系を卒業。在学中に一時大学を登校拒否し、フリーペーパー「吉祥寺ダラダラ日記」を制作、中央線沿線のお店で配布。また他学部の文芸評論家の加藤典洋氏のゼミを聴講、批評の勉強をする。同年、映画美学校の「批評家養成ギブス」(第一期)を修了。昨年(2017年)まで小さな学習塾で講師を続け、今年から、スペインのサラマンカの語学学校でスペイン語を勉強中。 

 
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東アジアの友人とタパスを食べに行く

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