一時期、大阪に遊びに来た友達にお土産としてよく渡していたのが「スーパー玉出」のショッピングバッグだった。スーパー玉出は大阪府に37店(兵庫県尼崎市にも1店)の店舗を構えるローカルスーパーで、月に数回行われる「1円セール」を目玉にした激安路線と、イメージカラーの黄色を基調とした派手な外観や色鮮やかなネオンで彩られる店内の強烈な印象とで、数あるスーパーの中でも独特のキャラクター性を持っている。
いかにも大阪らしいスーパーとして、大阪府民はもちろん、府外にも広く認知されており、観光客らしき人々がスーパー玉出の店頭で記念写真を撮っていく姿を多く見かけるほどである。
そんなスーパー玉出のショッピングバッグは、店のシンボルとなっているひまわりのマークの下にスーパー玉出の文字がドーンとプリントされたもので、絶妙に漂う生活感とポップなデザインが魅力だ。
もともとは、レジ袋有料化を周知する目的で2019年5月以降のイベント時にプレゼントされていたもので、それから何度か仕様を変更しつつ、2020年7月のレジ袋有料化と同時に販売が開始された。1枚168円と、お土産にと考えれば申し訳ないほどに手頃な価格だったが、大阪に来てスーパー玉出の店舗を訪れなければ買うことができないということもあって、渡した友人はみな喜んでくれた。嬉しがる友達に対し「大阪と言えばやっぱりスーパー玉出だからね!」となんだか鼻が高いような気分で言ったりしたものだ。
その後、ショッピングバッグに加え、同じデザインをモチーフにしたスマホケース、水筒、サコッシュなどのグッズも専用アプリで販売されるようになり、どれもすぐに売り切れる人気ぶりだった。
スーパーのシンボルマークと店名を大きくプリントしたグッズがこんなに人気を集めるなんて、スーパー玉出ぐらいじゃないだろうか、と思った。これはきっとスーパー玉出が培ってきた“大阪らしさ”があってこそではないだろうか。
大阪の人々の日々の生活を支えながら、いかにも大阪らしいスーパーとして愛される「スーパー玉出」はコロナ禍にどのように対応してきたのか、この2年ほどの動きを知りたいと思った私は取材を申し込み、スーパー玉出を運営する株式会社フライフィッシュの取締役・國枝尚隆さんにお話を伺うことになった。
2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。
プロフィール
1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。