大阪にはプロデューサーが必要だ
数週間後、松村さんが話していた『IN/SECTS』主催のブックマーケット『KITAKAGAYA FLEA 2022 AUTUMN & ASIA BOOK MARKET』が開催された。2022年10月22日、23日の二日に渡り、大阪市住之江区・北加賀屋にあるクリエイティブセンター大阪を会場して行われたイベントの初日の様子を見に行った。
かつて「名村造船所」があった跡地の広い建物を使い、1階はフードマーケット、2階は「大阪てしごと市」と題して雑貨店や衣料品店のブースが並ぶ。3階は「ASIA BOOK MARKET」フロアとして、関西圏でなく国内外からリトルプレスの制作団体や個人書店が数多く出店していた。
書店店主や本の著者をゲストに迎えたトークイベントもあり、ミュージシャンによるライブイベントもあった。
最終的な振り返りはまた松村さんに会った時に聞くとして、少なくとも私の目にはかなりの盛況に見えた。自費出版物や手作りの雑貨や関西圏の個性的な飲食店のフードを目当てにたくさんの人が集まる場が大阪にあるということに前向きなものを感じた。
数日後、改めて松村さんが「コケた」と語っていた『IN/SECTS Vol.005』の大阪特集号のページをめくっていると、映画監督の西尾孔志と『劇団 子供鉅人』の団長・益山貴司の対談記事が目に留まった。
「いま大阪は燃えているか」と題されたその対談の中で益山氏は言っていた。「東京に比べて大阪はプロデューサーが少ない。マーケットとコンテンツを結ぶひとが圧倒的に少ない。だから昔からそうやけど、なんでもせなあかん」と。
(つづく)
2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。
プロフィール
1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。