対談

武道家とヨーガ行者が考える、善く死ぬために必要なこと

後編 善く死ぬためには、よく生きること
内田樹×成瀬雅春

知らない世界は女子学生の話から学ぶ

内田 ゼミをやっているときは、自分が知っていることを教えても、おもしろくないんです。それよりも、僕の知らないことを学生から教えてほしい。だから、ゼミ発表では、「いかに雑学の内田といえどもこればかりは知るまい」という、そういう特殊なネタを持ってきてくださいとお願いしました。

 女子学生が知っていることで、僕が知らないことはそれこそ無限にあるわけです。21年間の女子大教師生活で学生たちに教えてもらったことはほんとうにたくさんありました。僕はずいぶんそれで見聞を広げましたし、エッセイのネタにもさせて頂きました。

成瀬 それは宝物ですね。

内田 宝物ですよ。教えているというよりも、教わっているんです。教師の僕にできるのは、学生が「とんでもない話」を振ってきたときにちゃんと受けとめて、面白がって、混ぜっ返して、もっと話を面白くすることです。人の話を素材にして、座を盛り上げるマナーというか技術というか、そういうものを学生には学んでほしいと思ってやってました。

 

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プロフィール

内田樹×成瀬雅春

 

内田 樹(うちだ たつる)
1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。
思想家。著書に『日本辺境論』(新潮新書)、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)、共著に『一神教と国家』『荒天の武学』(集英社新書)他多数。

成瀬雅春(なるせ まさはる)
ヨーガ行者。ヨーガ指導者。成瀬ヨーガグループ主宰。倍音声明協会会長。
ハタ・ヨーガを中心として独自の修行を続け、指導に携わる。著書に『死なないカラダ、死なない心』(講談社)他多数。

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