NYでは「ソーシャルミュージック」ということばがよく聞こえてくる
ここのところ、ニューヨークでは「ソーシャルミュージック」という言葉をよく聞きます。2022年にニューヨークを拠点とするシオ・クローカーというトランペッター、作曲、編曲家が『JAZZ IS DEAD』という作品をリリースしました。Rolling Stone誌のインタビューにおいて、シオはアメリカの今のジャズシーンに向けて警鐘を鳴らしています。
「ジャズは死んだ(JAZZ IS DEAD)」に込められた真意は「ジャズという包装紙」すなわち「ジャズを取り巻く状況」への疑問符、現在のアメリカのコミュニティにおいてジャズが人々のつながりに直結していない現実を憂い、ジャズの本来のあり方へ回帰しようとする想いを強調しています。
因みにこの作品には、大御所であるサックス奏者のゲイリー・バーツやシオの盟友であるカッサ・オーバーオールが参加しています。
デューク・エリントンやディジー・ガレスピーなどのレジェンドが醸す真髄のジャズの音に最新のテクノやDJを加える手法は、シオが先人たちの切り開いたジャズに深い敬意と力を持っているからこそできる芸当だと言えます。
プロフィール
(おおえ せんり)
1960年生まれ。ミュージシャン。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー。「十人十色」「格好悪いふられ方」「Rain」などヒット曲が数々。2008年ジャズピアニストを目指し渡米、2012年にアルバム『Boys Mature Slow』でジャズピアニストとしてデビュー。現在、NYブルックリン在住。2016年からブルックリンでの生活を note 「ブルックリンでジャズを耕す」にて発信している。著書に『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』『ブルックリンでソロめし! 美味しい! カンタン! 驚きの大江屋レシピから46皿のラブ&ピース』(ともにKADOKAWA)ほか多数。