特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく 第16回

山本草太が放つ「嘘のない意志」に勇気をもらう

高山真
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〇コレオシークエンスは、「特定のムーヴズ・イン・ザ・フィールドを見せ場にする」というよりは「両足のエッジを『蹴る』のではなく『両足とも氷から離すことなく、それぞれの足にかかっている体重のバランスを変えていく』ことでカーブを描きつつ、そのカーブを『ポイントポイントで見せる、片足の深いエッジ』でつないでいく」美しさを堪能しました。

 そのエッジワークに呼応する、パッションと切実感が同時ににじんでくるようなアームの動きも見事。下半身と上半身の動きの融合に感じ入りました。

 

〇ふたつめのトリプルアクセルの美しさ! ひざの柔らかなクッションが作り出す、着氷後の流れ……!

 着氷後、その美しい流れをいかしつつ、しかしジャンプの回転とは逆の時計回りのターンを入れるトランジションにもハッとさせられます。

 

〇ここまでで3本の4回転ジャンプ、2本のトリプルアクセルを跳ぶ、非常に野心的な構成で、やや疲れがあったのか、トリプルルッツ~オイラー~トリプルサルコーの3連続ジャンプの、ひとつめのルッツで転倒。次のジャンプ要素であるトリプルフリップを3連続ジャンプにするリカバリーを見せました。

 本来なら単独ジャンプであるはずのフリップの後にリカバリーのジャンプを入れましたので、続くフライングキャメルスピンからの足替えのコンビネーションスピンにもやや乱れが。

 これは、ルッツからの3連続ジャンプが成功し、かつ、単独のフリップも成功したときに、山本草太の持ち味のひとつである美しいスピンも、より強い光を放つことでしょう。

 私としては「まだまだ伸びしろがたくさんある」という意味にとらえています。

 

〇プログラム終盤のステップシークエンス。これだけのジャンプ構成の後でも、1歩1歩のスケーティングの伸び、そしてシークエンスのほぼ全編にわたって非常に美しいアーチを描いている背中のラインに強い感銘を受けます。

 また、要所要所で肩の付け根から大きく動き、ひじや手首が作るカーブのラインが、ひとつの大きな「流れ」を作っているアームの動き。これがエッジワークと、そして音楽と融合しているのを感じます。

 あらためて山本草太というスケーターの魅力を確認させてもらっているような喜びがありました。フィニッシュのコンビネーションスピンの美しさは、言うまでもないことでしょう。

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 第15回
特設エッセイ 羽生結弦は捧げていく

『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。

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プロフィール

高山真

エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。

 
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