対談

「日本の劣化」を食い止めるカギは「森のようちえん」にある!?【後編】

宮台真司×おおたとしまさ

「ひとを幸せにできるやつになれ」

宮台 受験で偏差値60の学校に入るか65の学校に入るかって、そんなに重要かな。おおたさんは受験の本も書いているし、その真意を僕はよく知ってるけど、やはりほとんどの親が問題の重み付けを間違えちゃうんですね。

受験なんて小指の先で片付けて、友達との遊びや恋愛の営みに時間を使うためのものが、受験技術。僕は、東大受験のときに、一日四時間以上は勉強しないと決めました。若い頃に時間の大半を受験に費やせば、キモいやつに堕落します。

90年代半ば、おおたさんとの共通の母校・麻布で講演した際、事後にお母さん会で「皆さんが女子高生だとして、息子さんと付き合えますか」と尋ねたら、全員「無理!」だと。「なぜ?」「キモイから」。いったい誰を育てているんだよ!

おおた 息子としてはかわいいけども、男としてはキモいって。それじゃあ、何のために育ててるの?という。

宮台 お母さん方は、「薄々わかってるんですが、他にどうしたらいいかわからなくて」と言う。そこがお父さん方と違った優位性ではあるけど、どうしたらいいかといえば、「森のようちえん的な営み」にできるだけ時間を使うってこと。

おおた そろそろ時間なのでまとめます。クソ化していく社会のモノサシに子どもを当てはめるんじゃなくて、子どもの共同身体性を殺さないようにする。それを特に幼児期のうちには存分に発揮できる体験をさせてあげるべきだという話ですね。

宮台 今日はロゴスに頼らない言葉遣いをしています。いろんなひとが聞いておられるので。くり返すと、子どもに接する際も、性愛の相手に接する際と同じで、「コントロールのための言葉から、フュージョンのための言葉へ」です。

おおた そうなんですよね。

宮台 「同じ世界」で「一つになる」ための言葉。営業マンやナンパ師を見れば、ひとは言葉で簡単にコントロールされて合意しちゃうのがわかる。「気が付いたら不本意」とならないためにも、「言葉の外への開かれ」が不可欠になります。

おおた すごくヒントになりますね。どうしても子育てしてると、「子どもをこうするためにはどういうふうに言葉を使ったらいいんでしょうか」ってコントロール系に発想がいくんだけども。親子で同じ世界に入っていくことをイメージすればいい。

宮台 子育てについての目標混乱があるんです。『14歳からの社会学』に書いたけど、「どんな大学に入ろうが、どんな仕事をしようが、ひとを幸せにできるやつになれよ」ってことでいいじゃん。まともな目標設定から始めてください。

 

※本記事は2022年1月10日(月)に本屋B&Bで行われた『ルポ森のようちえん SDGs時代の子育てスタイル』(集英社)刊行記念イベント「『日本の劣化』を食い止めるカギは『森のようちえん』にある!?」の内容を一部再構成したものです。こちらのイベントについては2023年1月10日(火)まで、以下のページでアーカイブ動画が販売されております。
https://bbarchive220110a02.peatix.com/

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プロフィール

宮台真司

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとにニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を博している。著書は『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(いずれも幻冬舎)、『14歳からの社会学』(ちくま文庫)、『社会という荒野を生きる。』(ベスト新書)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『音楽が聴けなくなる日』(共著、集英社新書)など多数。

おおたとしまさ

1973年東京都生まれ。教育ジャーナリスト。1997年、株式会社リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立。数々の育児誌・教育誌の編集に携わる。新聞・雑誌・Webへのコメント掲載、メディア出演、講演多数。著書は『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『受験と進学の新常識』(新潮新書)、『麻布という不治の病』(小学館新書)、『いま、ここで輝く。: ~超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』(エッセンシャル出版)、『名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと』『ルポ森のようちえん』(いずれも集英社新書)、『ルポ名門校 ――「進学校」との違いは何か?』(ちくま新書)など70冊以上。

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