2020年になりました。これまでのご厚情に御礼申し上げるとともに、お読みくださる皆様方にとって、実りある2020年になりますことをお祈り申し上げます。
私は肝臓の調子はまあまあいいのですが、もうひとつ付き合っている持病、ヘルニアが悪化してしまい、20年のスタートが遅くなってしまったことをお詫びいたします。
2月4日から始まる四大陸選手権を前に、昨年末のフィギュアスケートの全日本選手権を何度か見返しています。
今回の連載は、羽生結弦の全日本を振り返りながら、四大陸選手権、そして世界選手権に向けての思いを綴らせていただければと思います。
〇羽生結弦
羽生結弦の今シーズンのショートプログラム『Otonal』、そしてフリーの『Origin』の演技の振り返りは、この連載でNHK杯の演技を振り返ったエッセイで、自分なりに詳細に綴っているつもりです。
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/column/skate2/7584
ですので今回は、この全日本の演技から受け取った「新しい印象」を中心に書かせていただければと思います。
■ショートプログラム
冒頭の4回転サルコー。
「イナバウアーから左右の足を踏み替えておこなうエッジワーク。そしてインサイドのイーグルから再び左右の足を踏み替えておこなうエッジワーク」
という、非常に緻密なトランジションから跳ぶ4回転サルコーは、私にとって羽生のトレードマークのひとつです。そして今回、ジャンプを着氷した後のトランジションに目を見張りました。右足のバックアウトエッジで着氷し、足を踏み替えることなくフォアエッジへと、そのままイナバウアーと移っていくトランジション。会場で見ていて何より感激したのは、そのトランジションのなめらかさと距離でした。
パトリック・チャンのスケーティングの素晴らしさを表現するときに、どなたかが、
「ひとりだけスケート靴にモーターが仕込んであるのでは……と思うほど、ひと蹴りが伸びる」
と表現していたのを聞いたことがありますが、今回の羽生の、しかも4回転ジャンプを着氷した後のスケーティングにも、同じことを感じたのです。
「着氷直後より、エッジがフォアに切り替わってからのほうが、スピードが上がっているように見える」
その素晴らしさに息をのみました。
『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。