もちろん、全体のトランジションの密度など、見どころは本当に多いのですが、私としては、この部分が、シーズンが深まっていくにしたがって、どのように変化、深化していくかを本当に楽しみにしているのです。
というのも、本当に推測でしかないのですが、この一連のジャンプ構成の変更が、これで完成形ではないような印象を抱いていまして……。
「ここまで密度が高いにもかかわらず、かなりフレキシブルな印象を受ける」のです。
今シーズンの開幕前の「ファンタジー・オン・オイス」で、羽生結弦は4回転ルッツの着氷に成功しました。もし、4回転ルッツをプログラムの冒頭にもってくるとしたら、ジャンプ構成の大きな変更は、この後半のジャンプ構成の中でおこなわれるのではないか……。私はそう感じています。
羽生結弦はまだ、上を、先を見ている。
そのことに対する嬉しさやリスペクトを込め、このプログラムの後半にさらなる驚きが用意されていることを楽しみにしたいと思います。
〇レイバックイナバウアーとハイドロブレーディングをメインにした、コレオシークエンス。どちらも、いつもながらに眼福なのですが、ハイドロブレーディングでアームの動きにさらにバリエーションを加えていたかと思います。
こうした部分に、「上半身の動きの面でも、高められるものがあるはず」というテーマを持っているのがわかる……。私はそう思っています。
〇ハイドロブレーディングの流れからダイレクトにフライング。そして足替えのシットスピンへ。プログラム終盤でもこの密度の高さは、やはり特筆すべきものだと思います。
そして、最後までスピードの落ちないラストのコンビネーションスピンへ。
『羽生結弦は助走をしない』に続き、羽生結弦とフィギュアスケートの世界を語り尽くす『羽生結弦は捧げていく』。本コラムでは『羽生結弦は捧げていく』でも書き切れなかったエッセイをお届けする。
プロフィール
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。